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MLB

「今までとまた違うピッチャーになれた感じがする」メジャー3年目で好スタートを切った今永昇太の“微速前進”<SLUGGER>

ナガオ勝司

2026.04.20

 正確には「シーム・シフト・ウェイク(Seam-shifted wake)」(SSW)。投球の縫い目(Seam)が非対称な向きにあることで気流が乱され、非対称な乱流が生じて、スピン移動量を超えた予期せぬボールの変化を引き起こす空力学的現象のこと。ボールの片側に「低圧」領域を作り出すことで、ピッチャーが2シーム、スイーパー、チェンジアップといった球種の動きを増幅させることを言語化したものだ。

「2シームを2シームとして投げちゃったら、悪影響あると思いますけど、今は4シームと同じような感覚で離せて、勝手に曲がってくれるので、その勝手に曲がるってのが一番大事だと思う。自分では曲がってないように見えても、数字上、曲がっているってのが一番いいんで。自分の目で見て、『ああ、曲がってる』って思うのはあまり良くない。その発見ができたってのも良かったことですね」

 打者から見ても、それは同じだろう。「ああ、曲がってきた」と思えば、対処もできるが、曲がってないように見える球が実は手元で微妙に曲がってきたら、簡単には対処できない。事実、15日のフィリーズ戦では、打者がドンピシャのタイミングでバットを振ったのに空振りしたり、強い打球を打っても引っ張りきれなかったりした場面がいくつかあった。

 昨季より平均球速の上がった4シームに、昨季より角度が上がった腕。昨季より横幅は少なくなったものの、彼自身が許容範囲で動かしているスライダーと、握りだけで勝手に曲がる2シーム。「何か一つ」ではなく、今までずっと考えてきてコツコツと積み上げてきたアイディアの具現化が、今季のピッチングに反映されているのかも知れない。
 件のフィリーズ戦後、彼はこう言っている。

「こうやって抑えたら相手も対策してくるし、それを僕は越えようとしますし、やったやられたの世界なので、僕がやるべきことは、また次回対戦した時も変わらないマインドで、変わらないメカニズムで投げられるか。次に対戦した時も抑えられたらいい」

 弛まぬ向上心、などと書けば陳腐だが、一流のアスリートとはつまり、そういう人たちだ。

 今永昇太もその一人であり、現地4月21日に予定されている対フィリーズ第2ラウンドがどんな結果になろうとも、彼はきっと考え続けるのである。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
 
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