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MLB

あのボンズも巧みに操縦!サイン盗みの汚名にまみれたアストロズをワールドシリーズへ導いたベイカー監督の“人間力”<SLUGGER>

出野哲也

2021.10.27

 今季開幕直後のエンジェルス戦で、アナハイムのファンがアストロズへの抗議としてゴミ缶(※17年のアストロズは電子機器を使って相手のサインを解析し、ベンチに置いてあったゴミ缶を叩いて打者に球種を知らせていた)を投げ込む騒ぎがあった。

 これに対してベイカーは「観客の中で、人生において過ちを一度も犯していない者が何人いるだろう? 我々はすでに処罰を受けている。誰かに憎しみをぶつける前に、まず自らを省みてはどうだろうか」と諭してみせた。
 
 その一方、ヤンキー・スタジアムでホセ・アルトゥーベが辛辣な野次を浴びた際には「暴力行為さえなければ、何を言おうが彼らの自由」と受け流した。こうした落ち着いた態度が、(自ら蒔いた種とはいえ)醜聞にまみれ精神的な重圧を受けていた選手たちを保護し、のびのびプレーできる要因となったのだ。

 両リーグでの優勝は9人目、通算1987勝も歴代12位。これより多く勝利を挙げている監督は、有資格者は全員殿堂入りしている。ナショナル・リーグの覇者は、全盛期を過ごしたドジャースではなく、メジャー生活の原点となったブレーブス。監督人生の集大成として、ベイカーは初の世界一を懸けてワールドシリーズに臨んでいる。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 
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