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プロ野球

FA権取得時期が延びる「投げ抹消」、年俸調停制度の拡充――日本にMLB並みの労使交渉があったら問題になり得る争点<SLUGGER>

出野哲也

2022.05.05

 たとえば、現在は土日の試合はすべてデーゲームで行なわれることが多い。また、月曜日は一律で「休日」となっている。これは選手の体調を考慮した措置という側面もあるだろうが、「野球のない日・時間帯」が数多く生じるという問題が生じている。

 アメリカン・フットボールのNFLでは、日曜日に試合が行なわれるのが基本だが、月曜日と木曜日の夜も1試合だけ行なわれる。とくに「マンデー・ナイト・フットボール」と銘打たれる前者は人気カードが組まれ、高いテレビ視聴率を叩き出している。あえて通常のスケジュールからずらした編成にして特別感を醸し出し、注目が高まるよう工夫しているのだ。

 同じようなことは日本でも可能だろう。NPBが月曜日の全国テレビ放映枠を買い取り、好カードを組んで放映する。例えば、交流戦で佐々木朗希(ロッテ)と村上宗隆(ヤクルト)の対決が実現すれば、プロ野球の魅力をアピールする上で大いに助けになるだろう。

 クライマックスシリーズを両リーグが同日・同時刻に開催しているのも何とかしたい。MLBでは時差なども利用して、各カードの試合が重ならないように試合開始時間を調整する。試合前日になって開始時間が変わることも珍しくない。

 そのため、ファンはニューヨークでのヤンキース戦とシカゴのカブス戦、ロサンゼルスのドジャース戦を“はしご”できるのだ。時差のない日本でも、デーゲームとナイターに分けるくらいの工夫はできるはずで、これこそが本物のファンサービスではないのか。

 メジャーの選手会は激しい労働闘争を繰り広げた末に、年俸調停権やFA権を獲得してきた。だから、自分たちが勝ち取った権利だ、というという強い意識がある。対する日本は、一部の金持ち球団が自分たちの有利になるようFA制度を導入したという根本的な違いがある。ゆえに選手もプレーのことだけ考えていればいいとの感覚になっているのではないか。

 ストライキやロックアウトの心配がないのは喜ばしいことではある。ただ、MLBでは数年に一度、労使がそれぞれの主張を正面からぶつけ合うことが、長い目で見て球界の発展を助けてきた側面もある。日本でも、労使が球界のあるべき姿、将来について真剣に話し合う時期が来ているのではないだろうか。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 

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