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プロ野球

実力以外の要素に大きく左右される打点の欠陥。“打撃三冠”で評価する時代は終わった?【野球の“常識”を疑え!第2回】<SLUGGER>

DELTA

2022.07.13

昨季ナ・リーグMVPに選ばれたブライス・ハーパーは、打撃タイトルは無冠に終わったものの、OPSをはじめとした総合的な攻撃力が評価された。(C)Getty Images

昨季ナ・リーグMVPに選ばれたブライス・ハーパーは、打撃タイトルは無冠に終わったものの、OPSをはじめとした総合的な攻撃力が評価された。(C)Getty Images

 今回は打点について焦点を当てたが、打点だけでなく打撃三部門の指標は、いずれも打者の真の実力を評価する上では適切とは言えない。打率は、単打と本塁打を同価値として扱ってしまう欠点があるし、本塁打は本塁打以外の貢献を無視した指標だ。そのため、現在のMLBでは打撃三部門の権威は失墜し、打者の評価として扱われることがほとんどなくなっている。

 では、そのかわりにどんな指標を使うべきなのだろうか。打者の貢献度を簡単に測るには、OPS(出塁率+長打率)が適切だろう。試合における攻撃の目標は得点を奪うことで、OPSはその得点の大小と非常に高い相関を示している。OPSよりもさらに精緻に打者を評価する指標を存在しており、1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(weighted On-Base Average)や、リーグ平均に比べて得点増減に寄与したかを示すwRAA(weighted Runs Above Average)が代表格だ。

 近年は野球のデータ分析が進み、どういった打席結果がどれほどチームの得点を増加させるか、平均的な値が分かってきた。ここでの得点とは本塁への生還ではなく、得点の期待値をどれだけ増加させるかを意味する。例えば、2019~21年のプロ野球において、単打は平均0.44点、本塁打は1.40点、チームの得点期待値を増加させていた。逆に、三振は0.10点チームの得点を減らすことが分かっている。

【動画】怪物・村上宗隆が確信の一発! 完璧アーチを燕ファンに届ける
 こうして求められた各打席結果の得点を使い、貢献度を測るのがwOBAやwRAAといった指標だ。ここでは例として2022年プロ野球のwRAAランキングを見てみよう(x月x日時点)。wRAAはリーグ平均レベルの打者と比べ、その打者がどれだけ多くの得点を生み出したかを表す。

2022年wRAAランキング
村上宗隆(S)    43.2
山川穂高(L)    31.6
塩見泰隆(S)    23.7
丸佳浩(G)    19.5
牧秀悟(DB)    19.4

 ランキングを見ると、やはり村上や山川といった強打者が上位を占めている。wRAAは打撃三部門のように複数の項目を確認する必要がなく、これ1つで打者の評価が完結する。また、統計的により適切な重み付けが行われており、攻撃の目標である得点の単位で打者の評価を行えるという点でも有用だ。

 日本のプロ野球でもwRAAのような先進的な指標がスタンダードになる時代が来るのかもしれない。

文●DELTA(@Deltagraphshttps://deltagraphs.co.jp/

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

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