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プロ野球

DeNA戦力外の宮本秀明。“藤田の心得”を胸に「あきらめたくない。あきらめられない」

萩原孝弘

2022.12.01

二軍施設で“残った”仲間と別メニューをこなす中、宮本はプロの厳しさを痛感していった。写真:萩原孝弘

二軍施設で“残った”仲間と別メニューをこなす中、宮本はプロの厳しさを痛感していった。写真:萩原孝弘

「休んでいる時間はない」。トライアウトまでは秋季トレーニング中の球団施設DOCKで、毎日欠かさずトレーニングを積んだ。外野フェンスの外にある坂路でのダッシュを繰り返しながらふとグラウンドへ目を移すと、笑顔の“元”チームメイトがいる。

「つい先日まで皆んなと同じユニフォーム着て練習していたのに、このフェンスを境にまったく違う環境になってしまったんだな」と、寂しさと悔しさの感情が入り交じる。

 彼らの姿を目に焼き付けながら「坂道を全力でダッシュして、少しでも上に行けるようにと1本1本、気持ちを入れて走りました。負けるもんか、見返してやる、出さなきゃよかったと後悔させてやると自分に言い聞かせながら」とスイッチを入れた。

「室内では人のいないところで徹底的に追い込みました。なあなあになってはいけないと、選手とは触れ合わずに過ごしました。ニコニコとお喋りする時間があるなら、一回でもバットを振る。クビになった人間なんだ、甘い世界ではないんだ」と孤独な戦いを続け、やりきった
 
 そして迎えたトライアウト当日。熊本からは母が、横浜から駆けつけたファンの“00”のユニフォームやネームタオルが多く掲げられる楽天生命パーク宮城のグラウンドへ降りた。

 11月の仙台ながら、温かい陽が選手たちを包み込むような状況の中、巨人の変速右腕がクイックから投じたストレートをセンター前に弾き返すなど躍動。ベイスターズのユニフォームを着た最後のチャンスで結果を残した。「本当は3の3、2盗塁など圧倒的な結果を残そうと思ったのですが。でも1本出て良かったですよ」と、DOCKのときとは明らかに違う、普段の温和な表情が戻っていた。

 トライアウト5日間で吉報は届かなかった。しかし今年は現役ドラフトの実施もあり、編成面での動きは遅くなることも予想されている。

 プロ5年目にして、心技体が整い自信が付いた26歳。「今年は二軍では長打が多くなったので数は減りましたが、腹くくって走れば一昨日のように盗塁も決められる自信もあります」と最大の武器である足はブラッシュアップされている。

「自分で試してみて掴んだと思っていたことが、今まで結果が出ていないことで自信が持てなかったんですけど、キャリアのある先輩の声が重なった時に、これを信じてやっていこうという確信が持てました。なのでNPBで通用するのかをどうしても試したいんです。声をかけてくれた先輩たちのためにも諦めたくなし、諦められないんです」

 力強い表情で上を向いた宮本秀明。覚醒前、発展途上のスピードスターは、もう一度ダイヤモンドで輝く姿を思い描く。

取材・文・写真●萩原孝弘

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