黒木氏は現役時代に「魂のエース」と呼ばれ、ストイックに野球と向き合い続けた。そして、それは、番組作りにおいても存分に発揮された。『ワースポ』では１日計３試合を事前にスタッフがピックアップするのだが、黒木氏はその３試合を必ずスコアブックをつけながらチェックするスタイルを４年間にわたって貫き通してきた。

「野球が好きなんでしょうね、好きじゃないと１日３試合見ないですよ（笑）」

　笑顔でそう話した黒木氏。番組内などで、自らを「野球小僧」と表現していたことがあるが、屈託のない笑顔はまさに野球小僧そのもの。しかし、ただの野球好きという以外の理由もそこにはあった。
  「なぜこういう形になっていったかというと、僕の前任である小宮山悟さんが、１日３試合をスコアブックつけていたんです。コミさんが３試合やってる。田口（壮）さんも『大変だぞ、いっぱい見るぞ』って言ってましたし。本当に野球に真摯に向き合っている方々が、それだけちゃんと野球を見てこられた。『作られた台本通りにしゃべります』っていうのは解説者じゃないんで。

　メジャーの経験がなかったとしても、野球をやっていることは間違いないので。野球の流れとかポイントっていうのは、僕は一応解説者として野球を解説しなきゃいけないっていう立場でずっとやってました」

　先輩たちの教えを胸に、真摯に野球と向きあう「野球小僧」。その情熱は、番組全体にも相乗効果を生み出していくこととなる。

※後編に続く

取材・文●岩国誠

岩国誠（いわくにまこと）：1973年３月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のＡＤとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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