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【玉木正之のベースボール今昔物語:第15回】「それを作れば、彼らがやってくる」――アメリカ最高の野球映画『フィールド・オブ・ドリームス』の素晴らしさと“聖地”での思い出<SLUGGER>

玉木正之

2025.07.25

 もちろん私も順番を待つ列に並び、バッターボックスに立った。が、そこで少々驚いたのは、(私もそうだったのだが)バッターの順番を待つ人たちが一塁線ファウルラインに沿って10人以上並んでることだった。おまけにレフトやライトの外野にはビニールシートを広げてピクニック・ランチを楽しむ家族連れがいて、赤ん坊がハイハイをしている。

 なのに、使うボールは硬球(!)なのだ。コレって良いのかな? 危なくないのかな?と思いながらも、誰にも当たらないように軽くヒットを......と思って打席に立った私は、少しばかり"“受け狙い”をと思い、(私は右利きなので)思いきり左足を上げて1球目を見逃した。するとキャッチャーをやっていていた選手が立ち上がり、マスクを外して、「サダハル・オー!」と叫んでくれた。

“受け狙い”に成功したはいいが、調子に乗りすぎたのか、次の投球に詰まってボテボテのピッチャーゴロ。トホホ、打球もサダハル・オーとまではいかなかったが、気持ちよく野球を楽しんだ一日となったのだった。

 ほとんど野球に素人と言えるアメリカ人の女性や老人までが、硬球で野球を楽しんでいたことには驚いた。実際ゴロを捕り損ねて歯を折り、口の周りを血で染めて泣きじゃくっていた小学生と思しき子供もいたが、父親は、彼の肩を抱きながら「Allright! You have Guts!」と言って笑っていた。
 
 さて、近年もっと驚いたのは、この映画で使われた「夢の野球場(フィールド・オブ・ドリームス)」のすぐ側に、古いコミスキー・パークをオマージュした球場が創られ、22年と23年に「MLBアット・フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」が行われたことだ。

 22年はヤンキース対ホワイトソックスで、大熱戦の末に9対8でホワイトソックスの逆転サヨナラ勝ち。23年目はカブス対レッズで、4番・ライトで出場した鈴木誠也の先制二塁打などでカブスが勝った。

 球場近辺が改修されていることにより、24年と25年は開催されず。今後もまだ未定だそうだが、いずれはこの素晴らしいイベントは再開されることとと思う。ベースボールというスポーツは、「それを作れば、彼らがやってくる」というのが“原点”に違いないのだから――。

文●玉木正之

【著者プロフィール】 たまき・まさゆき。1952年生まれ。東京大学教養学部中退。在学中から東京新聞、雑誌『GORO』『平凡パンチ』などで執筆を開始。日本で初めてスポーツライターを名乗る。現在の肩書きは、スポーツ文化評論家・音楽評論家。日本経済新聞や雑誌『ZAITEN』『スポーツゴジラ』等で執筆活動を続け、BSフジ『プライムニュース』等でコメンテーターとして出演。主な書籍は『スポーツは何か』(講談社現代新書)『今こそ「スポーツとは何か?」を考えてみよう!』(春陽堂)など。訳書にR・ホワイティング『和を以て日本となす』(角川文庫)ほか。
 

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