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プロ野球

「反逆者」と呼ばれた男たちが切り拓く日本球界の未来【1】「勘違いから人生は始まるんですよ」菊池雄星の“10年後”の思い

氏原英明

2020.05.22

「FAが活発じゃないところに問題があるように感じます。海外FA権の取得までの年数が長すぎますよね。それを活発にして、その先にメジャーがあるという形にするのが理想じゃないでしょうか。9年は選手にとっても、球団にとっても長いと思います」

 菊池自身もそうだったが、日本の野球選手はさまざまなしがらみから、自身の夢や希望を率直に口にできない傾向がある。選手個々の意思が尊重され、それを周囲も理解した上で夢を実現する応援団になる。それが本来あるべき姿だろう。

 菊池は「高校生が夢を語れる野球界になってほしい」と語ると同時に、こうした夢の実現のためには、キーパーソンの存在が重要だと熱弁する。
 
「夢を壊す人って、実は一番近くにいるんです。家族とか、学校の先生とか。僕は『野球が仕事だ』と思ってやっているわけではないです。部活の延長線上でプロ野球選手になれた。好きだから野球をやっている。そう定義した場合、やりたいことがメジャーリーガーになることであれば、応援してあげないといけないのではないでしょうか。天理の選手がやりたいことがメジャーリーグでプレーすることなら、それを否定するのはおかしいでしょう」

「僕は幸いなことに、家族や高校の先生、仲間がみんな『メジャーで活躍するところを見たい』って言ってくれたので、その夢を追い続けられました。だから、選手の周りにいる人たちには圧倒的に影響を持っていることを自覚してほしいですね」

 菊池は高卒で海を渡ることの最大の意義は「ロマンを追うことだ」と語る。10年前の自分とは違う意見を口にできるのは、彼がプロに入って見た多くの景色がそうした思いにさせたのだろう。

「夢なんて勘違いじゃないですか。そこから人生は始まるんですよ」

 夢を実現した菊池は、実感を込めてそう語った。
【第2回に続く】

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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