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【NBAデュオ列伝】対照的な2人の邂逅は「神の御業」。“黒いレッテル”に負けずプロの教授を示し続けたストックトンとマローン|後編

出野哲也

2020.06.10

ストックトン(右)とマローン(左)のプレーは“ダーティー”ではなく“プロフェッショナル”の為せる業。頂点には立てなくとも、彼らがNBA史に残るデュオだったのは間違いない。(C)Getty Images

■認められた実力と反対に貼られた"黒いレッテル"

 リーグ最高のデュオとしての地位を築いたジョン・ストックトンとカール・マローン。しかし、すべてが順風満帆だったわけではない。

 2人には"ダーティー"との評判がついてまわった。レフェリーの目をかすめて巧妙にファウルする、故意にエルボーを食らわす、等々。それはまた、根拠のないことでもなかった。1991年、マローンはアイザイア・トーマス(元デトロイト・ピストンズ)の顔にエルボーを見舞い40針も縫う大ケガを負わせ、1998年にもデイビッド・ロビンソン(元サンアントニオ・スパーズ)に対する肘打ちで出場停止になっている。

 ストックトンも、ほかならぬデニス・ロッドマン(元シカゴ・ブルズほか)に「あんな汚いプレーヤーはいねえ」と呼ばれた。同期生のマイケル・ジョーダン(元ブルズほか)からも「ずる賢い選手」と形容されたこともあった。

 確かに、彼らのディフェンスはフィジカルであり、見方次第では反則ともとれただろう。けれども、身体の小さいストックトンにとって、こうしたテクニックは過酷なNBAで生き残っていくために不可欠だった。最も尊敬する選手としてストックトンの名前を挙げたこともあるコビー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)は言う。

「彼の攻撃性を非難する人もいるけど、当然のことをしているまでだ」
 
 マローンについては、辛辣な批評家でもあるフィル・ジャクソン(元ブルズ・ヘッドコーチほか)がこう語っている。

「彼はダーティーではない。チームのために身体を張ることと、ダーティーであるというのは違う」

 それに、2人が標的としたのは試合中の相手の選手だけであり、コートを離れれば彼らほどクリーンな選手もいなかった。レフェリーに盾突いたり、私生活で常に人々の嫌悪の的になるようなろくでもない連中とは、その点が全然違う。

 コート上で陳腐な自己主張をすることもなく、とりわけストックトンはその点が顕著だった。マローンはこう話す。

「ジョンもダンクはできるんだ。練習で見せてくれることがある。必要ないからしないだけだ。レッグスルードリブルとかビハインドバックパスだって、本当に必要な時しかやらなかった」
 
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“真のプロフェッショナルとはどういうものか”を示し続けた2人