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【NBAデュオ列伝】決別の理由はマーブリーのKGへの嫉妬。互いに別の道を歩むも、キャリア終盤に運命の邂逅が|後編

出野哲也

2020.10.17

ウルブズの未来を担う若手デュオとして期待されたKG(左)とマーブリー(右)。しかし良好な関係は長く続かず…。(C)Getty Images

■性格の違いと嫉妬が生んだあっけないコンビ解散

 ところが2人の関係は、この頃すでに微妙なものになっていた。

「みんなは俺たちがいつも行動を共にしていると思っているのかもしれないけど、そうではないんだ。彼はニューヨークの都会育ち、俺はサウスカロライナの田舎者。全然違う人間だからね」。

 KGのこの言葉が示すように、育った環境や性格の違いが次第に2人の間に溝を作っていった。だが、決定的な要因となったのは、98-99シーズン開幕前に、KGが6年で1億2000万ドルもの超高額契約を結んだことであった。マーブリーはKGに対し、激しい対抗心を燃やしたが、KGの契約後に改訂された新協定下では、ウルブズがマーブリーに対してKGと同等の契約条件を提示するのは不可能だった。上限ぎりぎり、6年7100万ドルでの契約延長の申し出を、マーブリーは即座に拒絶した。
 
「ミネソタは寒すぎてかなわない。大学時代に練習で来た時から、ここにはなじめなかった」「チームのために、相場より安い金額で再契約すべきだっていう人がいるけど、とんでもないね。これはビジネスなんだぜ」「故郷のニックスでプレーするのが、子供の頃からの夢。(マディソンスクエア・)ガーデンに行くと、自分の家にいるような安らぎを得られるんだ」等々……。

 金額の問題だけでなく、故郷への想い、そして「彼はケビンの陰に隠れることに耐えられなかった」(ググリオッタ)という強烈な自尊心。そのすべてがトレードの要求へと結びついていった。マーブリーの勝手な態度にKGは苦々しい思いを抱いたが、どうすることもできなかった。

 99年3月11日、3チーム計8選手を巻き込む大型トレードによって、マーブリーのニュージャージー(現ブルックリン)・ネッツへの移籍が決まった。ニックスではないが故郷にほど近いチームとあって、マーブリーは早速契約延長に同意。条件はウルブズが彼に提示し、拒否されていたものと同額であった。

「悲しいという気持ちはなかった。とても残念に思っただけだ」。当時の心境を、後にKGはこう振り返っている。「俺たちはめったにないチャンスがあった。若さとエゴがそれを台無しにしてしまったんだ」。
 
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移籍後に評価を下げたマーブリーとスターへの階段を駆け上がったKG