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ファンへの暴言、チケット剥奪、OBの出禁…ニックスのオーナー“狂人”ドーランの常軌を逸した行動【NBA秘話|後編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.05.18

“狂人”ドーランの常軌を逸した行動の数々。「チームを売れ!」と言いたくなるのも無理はない。(C)Getty Images

■MSGを"暴言"御法度の聖域にしたい暴君ドーラン

 その2か月後、ドーランはさらに信じがたい行動を取っている。ある日の試合前、ニックスの大ファンであり、シーズンチケット・ホルダーでもある35歳の弁護士、マイク・ハマースキーがガーデンのロビー近くでビールを飲みながら友人を待っていると、近くに停まっていたリムジンに向かって歩くドーランの姿が目に入った。

 咄嗟にハマースキーは叫んだ。「チームを売っちまえよ、ジム!」。ドーランは怒った表情をしながらハマースキーの脇を通り過ぎ、一旦は車にたどり着くも踵を返し戻ってきてこう言った。「今言ったのはどいつだ?」

 ハマースキーが名乗り出ると、ドーランは顔を5cmまで近づけ、罵詈雑言を喚き散らしたという。そして何度も「お前をガーデンには入れないからな」と凄み、チケットを見せるよう強要。ハマースキーが拒否すると、ドーランは付き添っていたセキュリティにハマースキーを入場させないよう指示し、そのセキュリティは1ブロック以上も後をつけてきたそうだ。ハマースキーはそれを振り切り、何とかガーデンに入場して観戦を果たした。
 
 翌日、ドーランの代理人が発表した声明文には次のように書かれていた。

"ガーデンのイベントにおいては、オーナーを含め、誰に対しても暴言を吐いたり、無礼なことをしたりしてはいけない、昨夜のファンは完全に一線を越えていた"

 驚くのはここからである。『ESPN』が報じたところによると、それからしばらく経ったある日、ハマースキーはシーズンチケットの更新をしようと、専任の担当者に電話を掛けたがつながらなかった。また、ネットの個人アカウントにもログインできず、電話でパスワードをリセットしてもらい、アクセスし直してシーズンチケットの更新を試みようとしたところ、"更新"のボタンが押せなくなっていた。再度専用ダイヤルに電話し、なんとかつながったものの電話を一方的に切られ、その後も2度に渡って切られたそうだ。
 
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ドーランはいかにしてニックスのオーナーになり得たのか