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KJの永久欠番化を“際どいジョーク”で祝ったバークレー。「素晴らしい時期も、難しい時期もあった」2人の物語【NBAデュオ列伝|後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2021.06.15

バークレー(右)の加入に際し、KJ(左)は彼と同様に髪の毛を剃って歓迎した。(C)Getty Images

 シクサーズ時代の末期、バークレーは悶々とした日々を過ごしていた。戦力強化に金を使わない経営陣との関係は、日を追うごとに悪化。チーム成績も奮わず、覇気を欠く同僚たちにも愛想を尽かしていた。

 悪名高い"ツバ吐き事件"を起こしたのもこの頃のこと。観客の口汚い野次にキレたバークレーは、その男に向かってツバを吐きかけたつもりが、過ってその側にいた8歳の女の子にかかってしまったのである。

 バークレーはこの出来事を心から悔やみ、謝罪したものの、メディアやファンからは非難の集中砲火を浴びた。とりわけ地元で激しいブーイングに晒されたことで、彼の心はフィラデルフィアから離れてしまう。またチームの方も、バークレーの放出を検討し始めていた。

 一方、サンズは1992年、新本拠地のアメリカウエスト・アリーナに移転。それに合わせてロゴやユニフォームも一新しており、さらに新たな船出の目玉商品として、ビッグネームの獲得に動いていた。そんな両球団の思惑が一致し、オールスター選手のジェフ・ホーナセックら3人のプレーヤーとの交換で、バークレーはサンズへと移籍する。
 
「フェニックスは楽しみだね。毎日ゴルフができるからな」と冗談を飛ばしながらも、バークレーは興奮を隠せなかった。ついに、優勝が非現実的ではないチームに加われたのだ。そしてKJの方も大喜びだった。

「信じられない。リーグ最高の選手とプレーできるなんて!」

 KJは歓迎の意を示すため、髪の毛を剃ってバークレーと同じヘアスタイルにしたほど。しかし、間もなく2人の間には微妙な空気が流れるようになった。

 まず、トレーニングキャンプでちょっとした衝突があった。バークレーがKJに激しく体当たりして、KJが突っかかっていったのだ。もっともこれは、バークレーがKJやサンズの選手たちが本当に"ソフト"であるかどうか試しただけだったので、わだかまりは残らなかった。本当の問題は、2人の性格が違いすぎたことだ。
 
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脚光を浴びるバークレーに、心中複雑なKJ