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国を追われても信念を貫き、ノーベル平和賞にノミネートされたエネス・カンター“フリーダム”の闘い<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.02.21

はたして今後、フリーダムのキャリアはどのような結末を迎えるのか。(C)Getty Images

はたして今後、フリーダムのキャリアはどのような結末を迎えるのか。(C)Getty Images

 今季のトレード・デッドライン前にボストン・セルティックスからヒューストン・ロケッツに放出され、4日後に解雇されて現在FA(フリーエージェント)となっているトルコ人センター、エネス・カンター・フリーダム。その彼が、2022年のノーベル平和賞にノミネートされた。

 同賞へのノミネートは、現職の国家元首、歴史・社会科学・法律・哲学・神学・宗教の大学教授、ノーベル平和賞の受賞者……といった、ノルウェーのノーベル委員会が定めた規定を満たした人物や団体からの推薦であることが条件だ。昨年は、団体・個人合わせて329組がノミネートされ、その中からフィリピン人ジャーナリストのマリア・レッサ氏と、ロシア人ジャーナリストのドミトリー・ムラトフ氏の2人が選ばれた。

 報道によればフリーダムは、ノルウェーの議会からのノミネートだったとのことで、それに答えて彼はツイッターで「ノーベル平和賞の候補に選ばれたことを光栄に思い、謙虚に受け止めています。時には次の給料よりも、身を挺して行動することが大切です」とメッセージを投稿している。
 
 母国トルコのエルドアン大統領を公に批判するなど、彼の政治的な活動は、すでによく知られている。そのためにトルコパスポートを失った彼は、昨年11月にアメリカ国籍を取得して、苗字も“自由”を意味する“Freedom”に改名した。

 中国共産党の習近平総書記や、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長にも堂々と苦言を呈している彼が、現在熱心に取り組んでいるのは、国際社会で問題提起されている、中国による新疆ウイグル自治区でのウイグル民族弾圧の問題だ。

 ウイグル民族はトルコ系の少数民族で、イスラム教徒。スイス生まれだがトルコ人の両親をもつムスリムのフリーダムにとっては、同じルーツを持つ同志でもある。

 ある日ブルックリンで、フリーダムが子どもたちを集めたバスケットボールキャンプを開催した時、子どもの親の1人に「君の同胞が酷い扱いを受けているのに、何も行動を起こさずに君は自分を人権活動家と言えるのか?」と問われたのが、彼がこの件について深く追及するようになったきっかけだったという。
 
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