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NBA

国を追われても信念を貫き、ノーベル平和賞にノミネートされたエネス・カンター“フリーダム”の闘い<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.02.21

 2011年のドラフトでユタ・ジャズから1巡目3位を受けてNBAデビューしたフリーダムは、今季までのキャリア11シーズンで5球団を渡り歩き、748試合に出場。平均11.2点、7.8リバウンド、0.9アシストという成績を残している。ただ今季のセルティックスでは出番が激減し、先発出場は1試合のみ、平均11分のプレータイムで3.7点、4.6リバウンドに数字が落ち込んでいた。

 セルティックスでよく指摘されていたの「ピック&ロールでディフェンスができない」という点。そして前述のGMが指摘しているように、昨今はパス回しが上手く、外からのシュートも得意とするビッグマンが多いなか、アシストや3ポイントはほとんど計算できないフリーダムのようなタイプの選手が、プレー的に求められなくなったというのはあるだろう。

 今後の彼のプランは「ギリシャに行って首相と面談すること」だと本人が同国のメディアに語っている。その目的は「押し戻されているトルコ人難民の処遇について話し合うため」とのこと。もはや本業は活動家といった感じだが「その結果次第では、ギリシャでプロとしてプレーする可能性についても話をするつもりだ」とも述べている。
 
 彼はニューヨーク・ニックス時代にチームメイトだったクロアチア人フォワード、マリオ・ヘゾニャのパナシナイコスへの移籍に絡んでいたと言われているから、すでにクラブとのコネクションもあるのだろう。5月で30歳、引退にはまだ早い。まあしかし、歴史的にトルコと因縁の関係にあるギリシャでプレーする、というのもまた、火に油を注ぎそうな気もするが……。

 祖国では政治犯扱いで、家族とも絶縁状態になり、命の危険に晒されたこともあるというが、彼自身は「人権を訴えたいだけで、政治にはまったく関心がない。このふたつはまったくの別物だ」と語っている。時に過激な発言もあるが、彼のような注目を集められる立場にある人物がオピニオンリーダーとして声を上げるのは、とても勇敢で、意義ある行為だ。

「次は“エネス“フリーエージェント”に改名か?」などというジョークは吹っ飛ばして、今後も我が道を突き進んでほしい。そう思わせてくれる稀有なプレーヤーだ。

文●小川由紀子

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