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「ボールに触ってないと感じたら、遠慮せず言ってこい」好調ペイサーズを牽引する司令塔ハリバートンの凄さとは?<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.12.04

ハリバートンはプレーメーカーとして好調のペイサーズを力強く牽引している。(C)Getty Images

 リムを破壊しそうな強烈ダンクや、見事なコンビプレーから生み出されるアリウープ、そんなシーンは、バスケットボール観戦の醍醐味だ。

 しかし、何度も見たくなるような技ありのパスも、それに匹敵するほど見応えがあると感じているファンは多いことだろう。

 現在、平均10.9本でアシストランキング首位に立つインディアナ・ペイサーズのガード、 タイリース・ハリバートンは、そんな人たちをワクワクさせる存在だ。

 現地時間11月28日に行なわれたロサンゼルス・レイカーズ戦でも、113-115と2点ビハインドで迎えた残り5秒でオフェンシブ・リバウンドを回収すると、逆サイドのアンドリュー・ネムバードにパス。

 今年デビューしたルーキーは3ポイントシュートをブザーとともに沈め、ペイサーズは116-115と、劇的な逆転勝利をものにした。

 そしてハリバートンは、この試合で3戦連続2桁アシストを記録しただけでなく、ターンオーバーもなんと3戦連続「0」という、NBA記録を打ち立てたのだった。

 今年2月、ドマンタス・サボニスらを含む大型トレードで、サクラメント・キングスからペイサーズに移籍して以来、ハリバートンはゲームメーカーとして、持ち前のバスケIQとパス技術を存分に発揮している。
 
 アイオワ州大時代から、彼の「巧さ」については知れ渡っており、2020年のドラフト前に30球団のゼネラルマネージャーを対象に行なったアンケートでは、42%が彼を「1位指名候補」に挙げていたというデータもある。

 しかしその予想に反して、12位指名に落ち着いたのは、「体格面の問題だった」と、プロスペクツを分析する専門サイト『envergure.co』のアナリスト、ロマン・ルロワは振り返っている。

「全体的に痩せていたが、とくに上半身が華奢だった。これでは競り合いには勝てないだろうと、多くの球団が二の足を踏んだ」

 卒業からNBAデビューまでの間に、5kgほど増量して体格改造に励んだが、それよりもハリバートン自身が意識的に取り組んでいたのは、技量を伸ばすこと。それがバスケIQを磨くことだった。

 ルロワは、ハリバートンの視野の良さの秘訣について、「何を見るべきかをわかっている。だから物事を一早く見抜くことができる」と分析しているのだが、ペイサーズでハリバートンとデュオを形成するルーキー、ベネディクト・マサリンもこう証言している。

「僕のことは見えていないだろう、と思っていたら見えていた、なんてことはよくある。僕が走っていると、ふっとボールが出てくるんだ。彼が僕にパスを出してくれるなんて全然思っていないような場面でもね。彼は、他の誰も真似できないようなビジョンとバスケIQを持っているのさ」
 
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ボールに触っていなかったマサリンに、ハリバートンがかけた言葉とは?