2020-21シーズンに琉球ゴールデンキングスでプレーしたビッグマンのキム・ティリ。ゴンザガ大で八村塁（ロサンゼルス・レイカーズ）のチームメイトだったキリアン・ティリー（元メンフィス・グリズリーズ）を弟に持ち、フランス代表では2014年のワールドカップで銅メダルを獲得している名手だ。

　そんな彼は今季、ルディ・ゴベア（ミネソタ・ティンバーウルブズ）やナンド・デ・コロ（元サンアントニオ・スパーズ）を輩出した、母国フランスの名門ショレでプレーしている。

　そして、先日、精巣がんに罹患していることをクラブの公式HPで公表した。

「腫れのようなものがあったけれど、痛みもなかったから、最初は大したことはないだろうと楽観していた。でもだんだん痛みが生じるようになって、検査を受けることにしたんだ」

　超音波検査で、睾丸の中心部に腫瘍が検出された。それは十中八九、悪性の腫瘍であり、切除は避けられないという診断だった。
  「大ショックだったよ。些細なことだと思っていたことが、すべてを台無しにしてしまうかもしれないなんて……。シーズンも、キャリアも、もしかしたらもっとひどいことになるかもしれない。僕は丸１日、ストレスを感じながら、病気がほかの場所に広がっていないことを確認するために、病院で検査を受け続けたんだ」

　公に発表したのは、同じ経験をしているかもしれない人たちへの気づきになれば、という思いからだった。

「噂や誤解を招かないようにしたかった。それに、僕のケースを参考にしてもらいたかったんだ。これは他人事ではない。もっと早く診察を受けることもできたし、そうすべきだった」

　手術はショレ市内のクリニックで４月６日に行なわれることが決まった。同時に、前日の５日まではチームでの活動を続けることも発表された。

　５日には、FIBAユーロカップ準決勝のBCカレフ／クラモ（エストニア）戦の第２試合目が予定されている。そこでガッツあふれるプレーを見せることで、手術に向かう自分の士気も上げたい、というのがティリ本人の願いでもあった。