NBA

群雄割拠のイーストを制するには…王者ラプターズに必要なふたつのピース

杉浦大介

2020.01.13

開幕前には、ベテランを放出して若手中心のチームに移行すべきとの声もあった。だが新エースのシアカムらの活躍もあり、ここまでカンファレンス4位と戦前の期待をいい意味で裏切っている。(C)Getty Images

 ファイナルを制した昨季のチームから、エースのカワイ・レナードと3ポイントと守備に定評のあったダニー・グリーンが流出。これにより、今季、トロント・ラプターズは一気に転落すると考えた関係者は多かっただろう。リーグ最高の選手の1人と目されるレナード抜きで勝てるはずがない。ならば、今季で契約が切れるベテランのマルク・ガソル、サージ・イバカを放出し、将来に備えるべきではないか、と。

 しかし、蓋を開けてみれば、誇り高き昨季王者は誰もが驚くほどの好スタートを切った。11月18日から12月1日までは、カイル・ラウリー、イバカが故障でほとんど出場できなかったにもかかわらず、破竹の7連勝を記録した。この時点でカンファレンス2位の15勝4敗。イーストではバックスに次ぐプレーをしているとの評価もあった。その後勢いはやや衰えたが、1月12日時点でカンファレンス4位の25勝13敗と、上々の成績でシーズンの折り返し地点を迎えようとしている。

「成績を気にするのは早すぎると言い続けてきたが、そうこうするうちに20試合以上が過ぎた。だいたい自分たちがどんなチームかがわかってくる時期だが、私は我々の現在の姿に満足しているよ」
 
 12月上旬にニック・ナース・ヘッドコーチ(HC)はそう語ったが、この頃にはもうチーム解体を勧める声はほとんど聞かれなくなっていた。ラプターズが戦前の予想を覆し、快進撃を続けた理由はどこにあったのか――。
 
 まずはレナードの後を引き継ぐようにエースに就任したパスカル・シアカムの成長が大きい。昨季MIPに輝いた25歳のライジングスターは、今季も平均得点、リバウンド、アシストのすべてで数字をアップさせている。 開幕前に4年1億3000万ドルのMAX契約を交わしたプレッシャーも感じさせず、今やMVP候補と目されるほどの存在になった。

 同じく25歳のフレッド・ヴァンブリート、22歳のOG・アヌノビーも成長を続けており、将来が楽しみなヤングコアトリオが確立された。ラウリー、ガソル、イバカといったベテランたちも、彼らを周囲で上手に支えている。

 加えてロンデイ・ホリス・ジェファーソン、テレンス・デイビスといった脇役の健闘により、控えの層も厚くなった。おかげでレナードが抜けても攻守のバランスは変わらず、ディフェンス、ケミストリー、そして〝王者のDNA〞のすべてを兼備した強豪チームを維持することができている。今季のイーストは群雄割拠となっているだけに、このメンバーなら上位進出も十分狙えるはずだ。