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NBA

NBA引退後は母国クラブの経営者に。第2のキャリアへ踏み出したトニー・パーカーの野望とは

小川由紀子

2020.03.31

現役時代の幅広い人脈を、現在のクラブ運営にも生かしている。(C)Getty Images

現役時代の幅広い人脈を、現在のクラブ運営にも生かしている。(C)Getty Images

 また昨年9月には、リヨンに自身が運営するアカデミーも開校した。メインはバスケットボールだが、eスポーツ部門も併設、今後は音楽部門など学部を増やす予定だという。「卒業後に全員が職につけること」を目標に掲げた、専門分野で若者の才能を伸ばす職業訓練校のような場にするのがパーカーが描く青写真だ。

 これらプロジェクトでは、この街の名門フットボールクラブ、オリンピック・リヨンと提携し、新しいアリーナの建設やアカデミーの運営といった部分で重要なパートナーシップを築いている。

 こうした活動を通して映し出されるのは、パーカーの人間力だ。アスヴェルの男子チームの会長補佐ガエタン・ミュラー、女子チームのマリー・ソフィー・オバマは、ともにパーカーが育成を受けた国立エリート養成所INSEP時代の選手仲間。アメリカ生活の間もパーカーは、かつての仲間たちと親密な交流を続けていた。そしてフランス代表やホーネッツでチームメイトだったニコラ・バトゥームも、主にリクルートや育成部門を管轄するディレクターとしてアスヴェルの運営に参画している。
 
 昨年5月には、マリー・ソフィー・オバマやバテゥームらと共同でグルノーブル近郊にあるスキー場の権利も手に入れた。選手時代はスキーといった危険を伴うスポーツは一切禁じられていたため、パーカー自身はスキーは未体験だったが、「これからはクリスマスをフランスで過ごせるから」と、妻や子どもたちが好きなスキーに興味をもったという。と同時に、年老いた前オーナーの下で経営が縮小傾向にあったスキー場に、新しいレストランや設備を導入して、地元の若者の雇用を増やしたり、活気を呼び戻したい、というのがパーカーの願いだ。

 5年前からはリヨンにも家を構えている。これまではもっぱら夏のオフシーズンを過ごす場所だったが、引退後はアスヴェルの試合にも可能な限り足を運ぶなど、フランスでの活動時間も増えている。

 しかし、家族の生活拠点はあくまでもサンアントニオだ。2014年に再婚した元ジャーナリストの妻、アクセル・フランシーヌも、昨年サンアントニオにヨーロピアンスタイルのスパを開業した。パリ育ちで、パーカーと出会った頃はニューヨークに駐在していた都会っ子の彼女にとって、テキサス暮らしは「順応の日々」だったという。それでも、今では人々の優しさやのんびりした街の雰囲気に馴染み、「フランスは、友達や家族に会ったり、バカンスを過ごしに帰ってくるところ。生活の拠点は完全にサンアントニオ」と話すほど、同地での生活が気に入っているようだ。そしてパーカーも、引退後は5歳と3歳の二人の息子と過ごす時間をより大切にしている。
 
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