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NBA

「大会で優勝するよりも……」セカンドキャリアを祖国とアフリカに捧げるルオル・デンの“願い”

小川由紀子

2020.07.20

 デンが南スーダンで暮らしたのは幼少期のほんの数年で、当時の記憶もほとんどないという。国際試合でのデンは、本格的にバスケットボールを始めた“第二の故郷”、イギリス代表としてプレーし、2012年のロンドン五輪にも出場している。

 しかしデンは、迷うことなくセカンドキャリアを祖国のために捧げることを選んだ。

「15年間もNBAにいたら、アメリカに残ってどこかのチームのスタッフになるとか、ほかに選択肢はいくらでもあった。でも、今自分が取り組んでいることに、大きな情熱と可能性を感じている。この国だけじゃなく、アフリカ大陸全体で、仕組みそのものを変えていきたいんだ」

 彼のその思いを、根底で支えている人物がいる。南スーダンが生んだ英雄、マヌート・ボルだ。

 1980年代中盤から1990年代にかけて、ワシントン・ブレッツ(現ワシントン・ウィザーズ)やゴールデンステイト・ウォリアーズなどでプレーした身長229cmの大型センター。人々にはリーグ史上2番目の高身長プレーヤーとして記憶されているだろう。
 
 最初の出会いは、デン一家がエジプトで生活していた9歳の時。NBAのシーズンオフに休暇として同地を訪れたボルは、子どもたちが思いつきでプレーしているのを見て、基本の動きや反復練習のやり方を熱心に指導してくれたそうだ。

 当時のデンは「サッカーの方が好きだったから、自分は見ていただけだった」という。しかしボルが去ったあと、カレッジバスケットボールの選手だったデンの兄がボルのメソッドを引き継ぐ。ほどなくして一家はイギリスに移住し、デンを現地のバスケスクールに連れて行ったが、これがデンのキャリアの始まりだった。

「マヌートの存在は、我々の歴史に重要な意義をもつ。みんなが彼を尊敬しているんだ」

 昨年12月に再編された南スーダンのバスケットボール連盟の新しいロゴには、ボルがシュートを打つシルエットが描かれている。

「連盟のロゴに彼をデザインすると決めたのは、上を目指す若者たちに、彼がいかに素晴らしい業績を私たちに残してくれたのかを、常に覚えていてもらいたいからだ。私自身、ここにこうしていられるのは、マヌートのおかげでもある。マヌートが私にしてくれたみたいに、これから多くの子どもたちにチャンスを与えていきたい」

 デンはFIBAへのインタビューで、そう思いを語っている。
 

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