施設や資源だけでなく、シューズや学校に必要な教材はおろか、日々の食事も満足に摂れない子どもたちが南スーダンには大勢いる。他の地域から大きく遅れをとっている自国の現状を知ることは、運営する厳しさの実感にもつながった。

　だからこそデンは、バスケットボールの振興が、祖国の人々の暮らしを向上させるための手段になると信じている。

「南スーダンには『こんなに才能のある人々がいるんだ』ということを世界に知ってほしい。そして自国民には、自分の国に誇れるものを持てるようになってほしい。試合でもなんでも、心待ちにできるイベントがあって、自国の若者がプレーする姿を誇らしく見守れる。そんなことにも、もの凄く大きな意味がある。究極的には、子どもたちがより良い未来への可能性を持てるようになること。それが我々連盟が目指しているものだ。代表チームが大会で優勝することではなくてね」
  　身体的なポテンシャルに、デンという強力なリーダーシップをもつ指導者が加わった。そしてボルの息子マデュットも、代表チームのアシスタントコーチとして南スーダンのバスケ魂を伝達している。

　南スーダンがアフリカにおけるバスケットボール強豪国の一角となり、それが人々の暮らしのなかの一筋の光となる。そんな日が近い将来、必ずやってくるはずだ。

文●小川由紀子

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