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NBA

1年目と現役最終年に優勝した“お祭り男”、サム・キャセールの栄光のキャリア【NBA名脇役列伝・前編】

出野哲也

2020.08.28

ドラフトは1巡目24位と決して評価は高くなかったが、持ち前の闘争心で居場所を確保。特にプレーオフでは勝負強さを発揮した。(C)Getty Images

ドラフトは1巡目24位と決して評価は高くなかったが、持ち前の闘争心で居場所を確保。特にプレーオフでは勝負強さを発揮した。(C)Getty Images

 しかし、92年のNCAAトーナメントでウォードが肩を負傷すると、キャセールに代役が回ってくる。生まれながらのお祭り男は、2回戦の強豪ジョージタウン大戦を前にして、チームメイトにこう言い放った。

「勝ちは決まったも同然だ。この俺がゲームを仕切るんだからな」

 そしてその言葉通り、自ら19得点をあげる活躍でチームに勝利をもたらした。それは彼が大舞台での勝負強さを証明した最初の試合だった。

■プロ入り前の低評価を覆し、ロケッツの初優勝に貢献

 FSUでは2年間で平均18.3点を記録したが、NBAスカウトの評価はさして高くはなかった。身体能力が低く、シュートの精度に難があり、PGとしては攻撃的過ぎる点などがマイナス材料と見なされ、93年のNBAドラフトでは1巡目24位指名(ヒューストン・ロケッツ)に甘んじる。

 しかし、ドラフト前にキャセールと面談したルディ・トムジャノビッチHCは、言葉の端々に迸る彼の闘争心を高く評価していた。そして、その見立てが正しかったと周囲の人間が気づくのに、さほど時間はかからなかった。開幕前のトレーニングキャンプでベテランたちにきつく当たられても、キャセールはめげる様子もなく、減らず口を叩きながらプレーを続けたのだ。当時のチームメイト、マリオ・エリー曰く「あいつにはルーキーだった時期なんてなかったのさ」。
 
 1年目はケニー・スミスの控えとして66試合に出場。平均6.7点、2.9アシストと目を引くような数字ではなかったが、プレーオフで本領を発揮する。フェニックス・サンズとのカンファレンス準決勝は平均12.7点、6.3アシスト、第7戦では29分間の出場でチーム2位の22得点をマーク。さらにニューヨーク・ニックスとのファイナル第3戦でも、2点のリードを許した残り32.6秒から逆転3ポイント、4本のフリースローを決める大仕事をやってのけた。

 試合後、ニックスのパトリック・ユーイングは「あの“コセール”とかいうヤツにやられた」と悔しがり、自軍のスーパースター、アキーム・オラジュワンは「彼が新人だなんて思っていないよ。賢いし、いつも自信を持ってプレーしているからね」と大絶賛。第7戦でもFGを6本中4本、フリースローは4本すべて決めて13点を稼ぎ出し、ロケッツの初優勝に大きく貢献した。

 キャリアで3度の優勝を経験したキャセールは、「ヒューストンのプロスポーツで最初の優勝だったから」との理由で、この初タイトルが最も感慨深いと振り返っている。
(後編に続く)

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2013年4月号掲載原稿に加筆・修正。

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