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NBA

屈辱のドラフト指名漏れから、セルティックスの“陰のキーマン”へ。エースと指揮官も一目置くブラッド・ワナメイカーのキャリア

小川由紀子

2020.09.14

 そんな彼を見初めたのは、マッカビでユーロリーグ優勝、2007年の欧州選手権ではロシア代表を金メダルに導いた名将デイビッド・ブラット(元クリーブランド・キャバリアーズ・ヘッドコーチ)。2016-17シーズン、彼が率いるトルコのダルサファカに迎えられると、ここでも誰よりも長くコートに立ち、平均16.7点、4.6アシストと、チームで断トツのスタッツを記録。評価指数ではユーロリーグ全体3位というハイパフォーマンスで、同クラブ史上初となるプレーオフ進出の立役者となった。

 すると翌2017-18シーズン、トルコの強豪フェネルバフチェがライバルからエースを奪取する形でワナメイカーをスカウト。欧州に渡って以来、一歩一歩着実に階段を登ってきた彼は、7シーズン目にしてユーロリーグのディフェンディングチャンピオンの一員となったのだ。

 その頃にはフロアリーダーとしての自信を積み上げていたワナメイカーは、センターのヤン・ヴェセリー(元ワシントン・ウィザーズほか)とともに、コートの両サイドでゲームを支配。フェネルバフチェは2年連続でファイナルに到達し、NBAファイナルに次ぐビッグマッチであるユーロリーグ決勝に挑んだ。
 
 激戦の末、80-85でレアル・マドリーに敗れて準優勝に終わったが、スターティングガードとして奮闘した彼を待っていたのは、セルティックスの選手人事部ディレクター、オースティン・エインジからの電話だった。

 それまでも、NBAチームからの勧誘は何度となくあったが、口約束だけで形にはなっていなかった。だからこの時も、ワナメイカーは半信半疑のままトルコリーグに集中。ファイナルMVP受賞とともにシーズンを終えた。

 しかしセルティックスは2018年7月、正式にワナメイカーの獲得を発表する。プレシーズンの間もまだ「非現実的な気がしていた」という彼が、NBA選手になった実感を得たのは、2018-19シーズンの開幕戦、そしてワナメイカーのデビュー戦だった。

 奇しくも相手は、少年時代から愛してきた地元クラブ、フィラデルフィア・セブンティシクサーズ。この試合でシュートを決めた瞬間、初めて「ついにここに来たぞ!」という思いがこみ上げたという。29歳、ようやく果たしたNBAデビューだった。
 
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