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NBA

欧州や大学を経て世界最高峰のリーグへ――苦労人ニック・ナースが優勝チームのコーチになるまで

杉浦大介

2020.10.21

 その過程で、パスカル・シアカム、フレッド・ヴァンブリートといった、当初はそれほど評価が高くなかった選手たちを見事に育成。同時に、昨ファイナル第2戦でステフィン・カリーに対してボックスワン・ディフェンスを仕掛けるなど、効果的なディフェンス戦術を敷いたことで評価を高めた。まだ全米的なビッグネームと言えないかもしれないが、ナースはその指導力を世界最高のリーグで轟かせるに至ったのだった。

「NBAでHCになったのは初めてでも、多くのリーグやチームでHCを務めてきた経験が糧になり、ステップアップできたのだろう」
 
 昨ファイナル中、ラプターズのチームリーダー、カイル・ラウリーはナースのことをそう評していた。実際に様々な経験があったからこそ、ナースはNBAでもすぐに能力を発揮できたに違いない。

 すでに優勝を経験し、GリーグとNBA両方で最優秀コーチ賞を受賞した史上初の人物になったが、NBAでの道のりはまだ始まったばかり。この知将を手にしたことで、ラプターズは今後しばらく、リーグを代表する強豪であり続けるだろう。

◆PROFILE
1967年7月24日、アイオワ州キャロル生まれ。89年にノーザン・アイオワ大を卒業するとイギリスに渡り、ダービー・ラムズで選手兼コーチを務めた。翌年にはアイオワ州のグランドビュー大でHCに。その後は、イギリス、イタリア、ベルギー、アメリカのUSBLで指導を続け、2007年にDリーグ(現Gリーグ)のアイオワ・エナジーのHCに就任。11年にチームを優勝に導き、最優秀HCに選出された。同年オフにリオグランデバレー・バイパーズに移籍し、13年には自身2度目のDリーグ優勝を果たす。この実績が評価され、ラプターズHCのドゥエイン・ケイシーからアシスタントコーチに招かれる。ケイシーの解雇に伴い18-19シーズンからHCに昇格すると、1年目でチームを初優勝率に導いた。

文●杉浦大介
※『ダンクシュート』2020年11月号原稿に加筆・修正

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