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NBA

【1周忌特別コラム】アンチすら魅了するコビーという男。因縁の相手とも友人関係を築き、そして生まれた“傑作CM”〈DUNKSHOOT〉

大井成義

2021.01.27

 仕事の必要に迫られたという事情もあるが、それだけではない。事故後数か月、現地のニュースサイトやNBA関連サイト、ツイッターなどで、コビーと事故にまつわる情報を飽きもせず日々チェックしていた。なぜそうしたのかは今でもよくわからないが、とにかく、コビーが突然この世を去ってしまったことは、自分の中でとてつもなく大きな事件だった。アンチだったにも関わらず。

 おかげで、コビーが住んでいたニューポートビーチの大まかな地図を、頭の中でざっくりと描けるようになった。住んでいた豪邸、事故の朝ミサに授かった教会、ヘリコプターが飛び立った空港、2人が眠る墓地、それらコビーにまつわる場所をGoogle Mapのストリートビューで訪れ、位置関係をいつの間にか把握してしまった。ちょっとしたストーカーである。もちろん、ニューポートビーチには一度も行ったことがない。
 
 この1年の間に最も感じたこと、それはコビーという存在の稀有さだろう。彼が持つハートの強さ、前向きさ、真っ直ぐさ、熱量、こだわり具合、ワーカーホリックぶり……、それらは完全に突き抜けている。異常と言っていいほどだ。怠け者の自分と比べたら、同じ“人間”とは到底思えない。加えて、頭脳明晰で話術に優れ、若い頃に欠いていたリーダーシップや人心掌握術も身につけている。無敵である。こんな人間、他にいるとは思えない。

 この1年間で、遅ればせながらコビーという男の凄まじさ、稀有さに気付かされた次第だ。もし生きていたら、アメリカ合衆国大統領や世界有数の投資家にでもなれたのではないだろうか。

 現在、『ESPN』のアナリストとして活躍している元NBA選手に、ジェイレン・ローズがいる。1990年代初頭のカレッジ・バスケットボール界に旋風をもたらした伝説のチーム、ミシガン大“ファブ・ファイブ”の裏リーダー的存在。彼もまた人一倍鼻っ柱が強く、やんちゃさと切れ味鋭いプレーを売り物に、プロ入り後も独特の存在感を放っていた選手だ。
 
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