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NBA

フルネームは49字、話せる言語は9種類…。何もかもが“長い”男ディケンベ・ムトンボ【NBAレジェンド列伝・前編】

出野哲也

2021.02.16

「トンプソンがビル・ラッセルと会わせてくれて、彼に“君ならNBAでプレーできる”と保証されたんだ。チャンピオンリングを11個も持っている人にそう言われたのは自信になった」。

 1991年のドラフトではナゲッツが1巡目4位で指名。通用するには数年かかるとの見方を覆し、1年目から攻守にわたって活躍する。新人ながらオールスターにも出場。平均12.3リバウンドはリーグ3位、2.96ブロックは5位とディフェンスの良さは前評判通りだったが、驚きだったのは攻撃でも16.6点をマークしたことだった。

 ゴール周辺でボールをもらってダンクを叩き込むだけでなく、動きこそ少々ぎこちなかったが、フックシュートを決めることができた。故意か偶然か、度々相手選手に振り下ろされる強烈なエルボーも脅威の的となった。

 代名詞の“フィンガー・ワグ”がお目見えしたのは、オールスター明けのホーネッツ戦だった。新人王レースのライバルである、ドラフト1位指名のラリー・ジョンソンのダンクを跳ね返した時、ホーネッツのベンチに向かって指を振ったのである。それはあたかも「ここは俺のテリトリーだぜ」と主張するかのようだった。
 
「あのポーズは子どもの頃からやっていた。兄弟喧嘩をした時、母親にあんな感じで指を振って注意されたんで、それを真似するようになったのさ」。

 ムトンボのブロックが炸裂し、フィンガー・ワグを繰り出すたびに、ナゲッツのファンは沸き立ち、相手選手たちは苛立った。これが挑発行為と見なされ、テクニカルファウルの対象とされてからは、観客席に向かって指を振るようになった。

 キャラクターも異彩を放っていた。レインボー・カラーのド派手なユニフォームに身を包んだ218cmの巨体は、それだけでインパクト満点。声もバリー・ホワイト(R&B歌手)を思わせる、地の底から響くような迫力満点の低音だったが、発せられるコメントはユーモラスかつウィットに富んでいた。

「コートではあれほど獰猛な選手はいないが、コートを離れれば人一倍人懐こい男だ」(解説者のビル・ウォルトン)

 快活な性格と親しみやすいスマイルで、フィンガー・ワグに腹を立てた選手でさえも、ムトンボを嫌うことは難しかった。(後編に続く)

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2011年6月号掲載原稿に加筆・修正。

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