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NBA

ホテルでの恐怖体験、始球式で大暴投、記者を驚かせた聡明さ…ドラフト前後の“ウェンバンヤマ狂騒曲”<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.06.26

 そして翌日の午後、スパーズが用意した2機のプライベートジェットに分乗して、ウェンバンヤマ一行はサンアントニオへと向かった。ちなみに同胞で同じ2004年生まれのシディ・シソコ(Gリーグ・イグナイト)も44位でスパーズから指名を受け、ウェンビー(ウェンバンヤマの愛称)のチームメイトとなる。

 ドラフトのちょうど1週間前の15日、ウェンバンヤマはフランスリーグのファイナルでモナコに0勝3敗のストレート負けを喫し、母国での最後の試合を終えたばかりだった。

 その翌日、両親とともにエマニュエル・マクロン大統領に招かれ、衣装の最終チェックに荷造りと慌ただしい日々を過ごし、アメリカへ飛びたったのが19日の月曜。

 ニューヨークに到着後も、MLBニューヨーク・ヤンキース戦で始球式を務めたほか、元ロサンゼルス・クリッパーズのJJ・レディックのポッドキャストや、ABC放送のモーニングショーに出演。ハーレムの小学校を訪問するチャリティー活動、NBA選手会やシルバーへの挨拶など、盛り沢山のスケジュールをこなした。
 
 行く先々でロックスター並の注目を浴びたウェンバンヤマだったが、同行していたフランスメディア『レキップ』の記者は「NYPD(ニューヨーク市警)は彼をガードするより、自分がサインをもらったりセルフィーを撮るのに精を出す始末だった」とその喧騒の模様をリアルに描写している。

 そうした体験のほとんどは、ウェンビーにとってはポジティブなものだったが、怖い思いをしたこともあったようだ。

 ドラフト候補の選手たちはみな同じタイムズスクエアのホテルに投宿していたが、ある日の真夜中、ボストン・セルティックスのTシャツを着た男がなぜかウェンバンヤマの部屋を突き止め、サインを求めに来たのだという。その男はすぐにつまみ出されたが、ウェンビーは大事をとって、荷物をまとめて別の階に移動した。

 サンアントニオに到着した時も、空港では大勢のファンから歓待を受けたウェンバンヤマ。彼はここから、そうした過熱気味の注目が常についてまわる、NBAでの新たなキャリアへと足を踏み入れる。
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