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NBA

ホテルでの恐怖体験、始球式で大暴投、記者を驚かせた聡明さ…ドラフト前後の“ウェンバンヤマ狂騒曲”<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.06.26

 その彼が今、目標としているのは「このリーグでタイトルを勝ち獲るために、できる限り早く学ぶこと」だという。そしてその先には「フランスを世界一のバスケ大国にしたい」という野望も持っていることを、彼は『レキップ』とのインタビューで明かしている。

 ウェンバンヤマは、不思議な魅力がある人物だ。野望を堂々と語り、常に自分自身への自信と期待はしっかりと表現するが、少しも傲慢さを感じさせない。

「すべての記録は破れられるためにある。ウィルト・チェンバレンの100得点だってね」

 そんな発言をしても、まったく“思いあがり”な印象を抱かせないのは、バスケの才がずば抜けているだけでなく、持って生まれた自然体のキャラクターや、知的で洗練された話術の賜物でもある。

 フランス人記者は、ウェンビーの受け答えに関心していた。

「彼の答えは理路整然としていて、一つひとつの答えの背後に真の考えがある。適当に言葉を発するのではなく、質問を聞いてから、じっくり考えて答える。しかもそこにユーモアまで交えるんだ。そもそも、あの年齢にして長い答えが返せるのもすごい。ウェンバンヤマは、僕たちがスポーツ選手のインタビューでは一度も聞いたことのないような単語を使ったりするから、こちらが驚かされるよ」
 
 この目まぐるしいスケジュールの中で、彼は分厚いシリーズ本を読み終えていたそうだ。ゲームより読書を好むウェンビーならではのボキャブラリーや発想の豊かさが、彼の人物像の源だろう。

 ウェンビーに最初にバスケットボールの手ほどきをした元選手の母も、ドラフト会場でのインタビューで「バスケットボール選手である以前に、1人の若者として、素晴らしい息子であり兄弟たちの良き兄である彼を誇りに思う」と話していた。

 フランスリーグの最終戦後「フランスを去った後に一番恋しくなるものは?」と問われると、その母親が作る手料理と答えた後で「いや、その前に家族だ。おじいちゃんや従兄弟たちには、今までみたいには会えなくなる。僕という人物を形成してくれた彼らと会えなくなるのが一番寂しい」とウェンビーは続けた。

 レブロン・ジェームズが「エイリアン」と描写したフランスの逸材が、来季にいよいよNBAでデビューする。どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、10月のシーズン開幕を多くのファンが心待ちにしていることだろう。その前に、今夏のワールドカップでも、フランス代表で活躍する彼の勇姿が見られるかもしれない。

文●小川由紀子

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