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NBA

「あの時、ジョーダンをガードしていた人」ミスをしていなくとも戦犯のように扱われたイーローのキャリア【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.07.11

 2010年には古傷である背中の痛みが悪化し、6か月間の安静を要する手術に踏み切ったが、鎮痛剤を服用し続けた結果、薬物中毒に陥る。挙句の果てには、矯正施設へ収容しようとした家族に暴力を振るって逮捕と、またしても不本意な形でニュースになってしまった。

 14年間のNBAキャリアであげた平均得点は8.6、そして個人賞とも無縁だったイーロー。ロールプレーヤーとして優秀だったのは確かだが、“ザ・ショット”がなければ、とっくに忘れられていた選手であろう。『ザ・ラストダンス』でキャブズ時代の同僚ロン・ハーパーが「あの場面は俺がマイケルを守るべきだった」と語ったことについて「あの当時、ハープはそれほどディフェンスに熱心な選手じゃなかった。そんなことを言われるとは心外だ」と不満を述べていた。
 
 いずれにしろ、“ザ・ショット”は一般のNBAファンやジョーダンの信奉者にとっては素晴らしい瞬間であり、クリーブランドにとっては長く苦い思い出であり続けた。キャブズの優勝でイーローもようやく呪縛から放たれたわけだが、それは彼の名がより一層忘れられていくことも意味する。イーローにとって、これが本当に幸せなことなのかどうかは、定かではない。

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2014年11月号掲載原稿に加筆・修正。

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