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NBA

スーパーソニックス移転の“悲惨さ”を伝えた熱き男たち。1万ドルを費やし世界へ訴える【NBA秘話|後編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.10.05

長年に渡ってソニックスの専属アナウンサーを務めたカラーブロウは移籍を拒否し、チームと運命をともにした。(C) Getty Images

長年に渡ってソニックスの専属アナウンサーを務めたカラーブロウは移籍を拒否し、チームと運命をともにした。(C) Getty Images

 2008年夏、ソニックスはシアトルを離れることになり、41年間続いた歴史に終止符が打たれる。チームの移転に伴い、スタッフや関係者への対応は様々だった。オクラホマシティへの異動の声がかからなかった者もいれば、オファーのあったスタッフの中には即決する者や、迷う者もいた。もちろん、カラーブロウにもオファーがあった。オファーどころか、チームに必要不可欠な存在だった。

 フランチャイズ移転の経緯は、カラーブロウも当然知っていた。そして、ファンの気持ちも。カラーブロウは迷った末、オクラホマシティ行きを断る。4人の子どもの生活環境を変えたくないという理由もあったが、それは単身で通えば解決できた問題だった。

 カラーブロウにとって、それまでと同じようにソニックスの選手をサンダーの選手として実況することはできなかった。悲嘆に暮れているソニックスファンのためにも、そして何より、己の矜持のためにも。大切な仕事を犠牲にしてでも、どうしても譲れない一線が彼にはあった。
 
 カラーブロウは現在64歳。『TNT』のNBA中継や、『ESPN』のリードアナウンサーとしてNBAファイナルのラジオ中継も何度か担当した。2016-17シーズンからはブレイザーズの専属アナウンサーに就任し、その高い能力を遺憾なく発揮していたのだが、新型コロナウイルスの中断明けの試合には復帰せず、ブレイザーズのチームアナウンサーの職を辞している。一身上の都合だそうだ。

 最後に余談をひとつ。シアトルを拠点とする4大ネット系列局の公式サイトに掲載されていたブログで、ある記者がカラーブロウのサンダー専属アナウンサーへの就任辞退を記事にしていたのだが、その結びの文章にやられた。公式サイト内の記事である以上、デスクや上司のチェックが入るはずであり、日本だったら即刻削除され、ブログ担当者は大目玉を食らうレベルだろう。アメリカのメディアは、まだまだ健全だなあと思わされた次第だ。

(カラーブロウのオクラホマシティ行き辞退について)“個人的な短信:よくやったぞ、ケビン!”

文●大井成義

※『ダンクシュート』2020年10月号掲載原稿に加筆・修正。

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