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NBA

アービングとトーマス――のちにトレード相手となる2人が1位と最下位で指名された2011年【NBAドラフト史】

大井成義

2019.11.29

2011年組最大のサプライズはトーマス。2巡目60位指名からオールスター選手へと異例の大出世を遂げた(C)Getty Images

2011年組最大のサプライズはトーマス。2巡目60位指名からオールスター選手へと異例の大出世を遂げた(C)Getty Images

 2011年のドラフトは、定番会場のマディソンスクエア・ガーデンが老朽化による長期修復工事に突入していたため、ネッツのホームアリーナ(当時)であるニュージャージーのプルデンシャルセンターで6月23日に開催された。

 デイビッド・スターン・コミッショナーから1位指名選手が発表される直前、グリーンルームで緊張しまくっているアービングの姿が、冒頭で紹介したビデオに記録されている。家族にせわしなく話しかけたり、大きく息をついたりと、いつもの落ち着き払ったアービングとはまったく違い、見ていて微笑ましい。スターンがドラフトの開会を宣言し、1位指名選手が発表されるまでの5分間は、「人生で最も長い5分間だった」と後にアービングは語っている。

 いの一番で名前を読み上げられたのは、予想通りアービングだった。直後の場内インタビューで、ESPNのマーク・ジョーンズが語ったところによると、アービングはドラフト前にキャブズ以外のどのチームともワークアウトを行なわなかったという。代理人のジェフ・ウェクスラーも、アービングの最優先チームはキャブズだったと、オハイオの地方紙で明かしている。
 
 2位のウルブズはウィリアムズを指名し、続いて3位のジャズがトルコ人センターのエネス・カンターを、4位のキャブズがテキサス大1年でカナダ出身のパワーフォワード、トリスタン・トンプソンを指名。カナダ出身選手としては、当時最高位での指名だった(後にベネットとウィギンズが1位で指名)。ここから冒頭のラプターズの動画に話はつながる。

 映像のオープニングは、トロントに設置されたドラフトルーム(作戦本部)で、エグゼクティブや関係者十数人がドラフトの様子をテレビ越しに見守っているシーンから始まる。そして壇上のスターンが「4位キャブズの選択選手はトリスタン・トンプソン!」と発表すると、室内は一斉に色めき立ち、あちこちでガッツポーズが繰り広げられたのだった。

 トンプソンは地元トロントの出身である。トンプソンのラプターズ入団は、双方にとって最良のシナリオではなかったのか? 実際、トンプソンがラプターズのワークアウトに招待された際のインタビューでは、「ラプターズの大ファンだった。チーム創設後の最初のプレシーズンゲームをスカイドームに観に行ったよ」と語り、地元チームへの愛を吐露している。

 だが、現実はシビアである。コランジェロとラプターズが5位指名権で狙いを定めていたのは、同じビッグマンでも地元のローカルヒーローではなく、リトアニア人センターのヨナス・ヴァランチュナスだった。コランジェロは彼のプレーを生で観るため、何度かリトアニアまで足を運んだそうだ。
 

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