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NBA

アービングとトーマス――のちにトレード相手となる2人が1位と最下位で指名された2011年【NBAドラフト史】

大井成義

2019.11.29

11位指名のトンプソンはウォリアーズ入団後、十八番の長距離砲に磨きをかけ、3度の優勝に貢献。(C)Getty Images

11位指名のトンプソンはウォリアーズ入団後、十八番の長距離砲に磨きをかけ、3度の優勝に貢献。(C)Getty Images

 パワーフォワードがだぶつき気味のキャブズが4位でトンプソンを指名したことに、コランジェロは少々驚いたという。映像でも、ヴァランチュナスを獲得できたことを「信じられない」と何度か口走っている。所属クラブとの契約の絡みで、ヴァランチュナスがNBAでプレーできるまで丸1年待たなければならなかったが、それでもラプターズは望み通りの選手を手に入れることに成功したのだった。

 サプライズはもうひとつあった。ラプターズの指名が発表された直後、デマー・デローザンをはじめとするチームの主力選手が、突如ドラフトルームに姿を見せたのである。彼らは集ってドラフト中継を見守り、首脳陣に労いと祝福の言葉を掛けるため、わざわざ訪れたのだという。このチームの団結力や絆の強さが、後のラプターズの躍進につながったのかもしれない。

■下位指名にはNBA入り後に出世した実力派選手がズラリ

 この年は、下位指名選手にもNBAで結果を残した選手、それもオールスタークラスの実力者が揃っており、大きな特徴のひとつとなっている。カワイ・レナードなどは、15位指名からリーグを代表する選手へと上り詰めた。5位以降で特筆すべき選手は以下の通り。

9位:ボブキャッツ(現ホーネッツ)/ケンバ・ウォーカー(コネティカット大3年)
11位:ウォリアーズ/クレイ・トンプソン(ワシントン州大3年)
15位:ペイサーズ(→スパーズ)/カワイ・レナード(サンディエゴ州大2年)
30位:ブルズ/ジミー・バトラー(マーケット大4年)
60位:キングス/アイザイア・トーマス(ワシントン大3年)
 
 最大の拾い物は、60位という最終順位で指名されたトーマスだろう。最終指名選手がオールスターに選出された例は、後にも先にもトーマスただ1人。また、トーマスの上位4人、つまり56位から59位までの指名選手は、NBAのコートに一度も立てていない。そのことからも、トーマスがいかに大きな飛躍を遂げたかがよくわかる。

 2017年8月、そのトーマスが同期で1位指名のアービングとトレードされた。アービングの移籍志願に巻き込まれる形で、また目玉選手であっても1対1のトレードではなかったが、同じドラフトクラスの1位指名と最終指名選手がトレードされるという因縁めいた巡り合わせに、ある種の感慨を覚えた人も多かったのではないだろうか。
 
 最後に喜ばしいネタをひとつ。2018年5月に行なわれたドラフトロッタリーにニックが帰ってきた。キャブズのオーナー、ダン・ギルバートの息子であり、チームのラッキーチャームとしても名を馳せた、あのニックである。

 21歳になったニックは、2月に大掛かりな脳の手術を受け、無事成功裏に終わったのだという。それを受けて、チームの代表として再びロッタリーに参加することを決意。1位指名権獲得の確率は2.8%と、4度目の奇跡を起こすには厳しい数字だったが、それでも彼がその場にいること自体が奇跡のようなもの。ニックのドラフトロッタリー復帰は、キャブズや地元ファンのみならず、多くのNBAファンにとって、殊のほか大きな意味を持つ出来事だったに違いない。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2018年8月号より加筆・修正。
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