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NBA

なぜコビーはヘリコプターに乗っていたのか…墜落事故の同乗者や、現地での様子は

大井成義

2020.01.29

 また、『ニューヨーク・ポスト』の取材によると、「常にクールな男」であり、確かな腕前を持っていたという。他にも、『ウォールストリート・ジャーナル』の記事には、ゾバヤンとともにコビーのパイロットを頻繁に務めていたカート・ディーツが、「ゾバヤンはロサンゼルスエリアに深く精通した優秀なパイロット」だったと証言している。2019年7月の時点で、ゾバヤンの飛行時間は8200時間。2016年、コビーの現役ラストゲームの日も、同機のパイロットを務めたそうだ。

 マンバ・スポーツアカデミーのあるニューベリーパークは、ロサンゼルスのダウンタウンから西に直線距離で約60km、コビーの自宅のあるニューポートビーチからは北西に約110㎞離れた場所にある。ニューポートビーチからマンバ・スポーツアカデミーまでのルートをGoogle Mapで検索すると、車での所要時間は平日の午前中で1時間半から2時間半ほど。ヘリコプターだと30分程度の飛行時間で着く。

 コビーを含む8人の乗客を乗せたシコルスキーS-76Bが、ジョン・ウェイン空港を出発したのは2020年1月26日(日)現地時間午前9:06(日本時間午前2:06)。目的地はキャマリロ市の西3㎞に位置するキャマリロ空港。マンバ・スポーツアカデミーは、その空港から車で20分の距離にある。コビーが日常的に飛んでいるルートであり、同機は前日もほぼ同じルートを飛行していた。
 
 出発の1時間前、ニューポートビーチ近辺の天候は穏やかで、視界は4マイル(約6.5㎞)と良好。だが、ロサンゼルスの北部近郊は霧が立ち込めており、フリーウェイを車が満足に走行できず、ロサンゼルス市警察は保有する全ヘリコプターを地上待機させるほどひどい状況だった。

 事故が起きる少し前、偶然SNSに投稿された現場近くの写真を見ると、数十メートル先が見えないほどの濃霧である。『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューに答えた地元民の証言では、「牛乳のプールを泳いでいるよう」だったという。

 飛行開始から約10分後、ロサンゼルス市北部を飛行中に航空交通管制から連絡が入り、近くで他のヘリコプターが着陸を試みているため待機せよとの指示が入る。ゾバヤンは空中でサークル飛行を開始し、指示に従った。『ウォールストリート・ジャーナル』によると、機体の飛行距離を考えると異例の出来事だという。

 約12分のサークル飛行後、SVFR(Special Visual Flight Rule、特別有視界飛行方式)の指示に基づき、濃霧中の飛行を続行。SVFRが出された場合は、航空交通管制に権限が移行し、基本となる有視界飛行方式から航空領域を制限され、密な連絡が必須となる。その際、高度1000フィート(305m)以下の飛行が特別に許可される。
 

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