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NBA

ドクターJ、ドミニク、ジョーダン、カーター……多くのスターが伝説を残したスラムダンク・コンテストの歴史

大井成義

2020.02.15

2000年大会の王者カーターは、逆方向に1回転して決めた360のウインドミル、レッグスルーやボールを掴んだ右手をリングの真上からヒジまで突き刺した“ヒジ入れダンク”など、妙技を次々と披露。そのインパクトは強烈で、今なおカーターこそ歴代最高のダンカーと信じる者は多い。(C)Getty Images

2000年大会の王者カーターは、逆方向に1回転して決めた360のウインドミル、レッグスルーやボールを掴んだ右手をリングの真上からヒジまで突き刺した“ヒジ入れダンク”など、妙技を次々と披露。そのインパクトは強烈で、今なおカーターこそ歴代最高のダンカーと信じる者は多い。(C)Getty Images

 それでも、カーターがもたらした新たな熱気を定着させることはできなかった。ジェイソン・リチャードソンのアクロバティックなダンクや、ドワイト・ハワードのスーパーマンダンク、ブレイク・グリフィンの車超えダンクなどエンターテインメント性に富んだパフォーマンス、小兵ネイト・ロビンソンの歴代最多となる3度のチャンピオン獲得など、それなりに話題性のある年はあっても、一方で不完全燃焼に終わる年も少なくなかった。

 スター選手の出場回避や、バリエーションのネタ切れ。リーグ№1ダンカー決定戦から若手の登竜門的なイベントに移行し、フォーマットやレギュレーションの変更を繰り返すなどして、リーグはイベントの活性化を図ろうと試みたが、皮肉にもますます混迷の度合いを増していく。ダンクコンテストは再び低迷期をさまようことになるのか、そう思っていた矢先、またもやダンクの神様が舞い降りる。

 2016年、ジョーダンのレーンアップやカーターのリバース360に並ぶ、驚異的な一発が披露される。新鋭アーロン・ゴードンがやってのけた、マスコット越えの両足レッグスルー。中継局のTNTで、解説というか賑やかしを長年担当している元NBA選手のケニー・スミスは、カーターの時とまったく同じ決めゼリフを大声で何度も叫んだ。

“It’s over! Let’s go home! Let’s go home! 〞「(あまりに凄すぎる一発に、コンテストは)もう終わりだ、家に帰ろう!」
 
 だが最終的に勝利をもぎ取ったのは、前年度の覇者ザック・ラビーンだった。岩をも砕く大鉈のようなゴードンのダンクに対し、切れ味鋭い日本刀のようなラビーンのダンク。お互い一歩も引かず、極上のバトルを展開した2人の絶技に、世界中のバスケットボールファンが酔いしれた。超ハイレベルで熾烈な戦いは、ドミニクとジョーダンが火花を散らした1988年のコンテストに肉薄していたと言っても過言ではないだろう。

 2人が繰り出した究極のダンクの数々は、この先もずっと語り継がれるに違いない。ドクターJやドミニク、ジョーダン、カーターらのダンクが伝説となり、時を経ても鑑賞に耐えうるように、ゴードンとラビーンによる渾身のダンクも、今後決して色褪せることはない。

 ダンクは進化する。ケニー・スミスの“It’s over! Let’s go home!”を次に聞けるのは、いつだろうか。まだ見ぬ、想像を遥かに超えた衝撃の一発を楽しみに、次なるスラムダンク・コンテストを心待ちにする日々である。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2017年4月号掲載原稿に加筆・修正。

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