ワールドカップ優勝4度の強豪国も、育成面では社会構造の変化にしたがって既存の枠組みでは対処しきれなくなっているようだ。新たに表出してきた課題に対して、先進国の一つでもあるドイツはいかなる取り組みを見せているのか。ドイツで育成指導者としても活動する中野吉之伴氏がレポートする。
――◆――◆――
サッカーはドイツにおいても今も変わらず国民的なスポーツだ。スマホの影響が日々大きくなってきているのは否定できないものの、それでも子どもたちの多くはサッカーをしたいと思ってくれている。
【ブカツへ世界からの提言】暴力ってなんだろう? 子どもの尊厳を踏みにじってはいけない――日本の"悪しき伝統"をドイツの指導者はどう見る?
1.FCケルン育成アカデミー元統括部長クラウス・パプストは「ドイツには優れた資質を持った子どもたちがたくさんいるんだ。それもブンデスリーガの育成アカデミーだけではなくて、普通の町・村クラブにも優れた資質を持った子供たちが本当にたくさんいる」と話をする。
ただそんな彼らが育っていく環境作りは十分ではない。ドイツのスポーツ文化はボランティア精神に支えられている。そのおかげで誰でも年に60ユーロほどの会員費を払えばトレーニングに参加して、週末の試合でプレーができる。それ以上の月謝も登録費もない。
スタッフや指導者はみんなクラブに関わることが喜びあり、そこでサッカーに触れ合い続けられるのが生きがいだという人がたくさんいる。僕がドイツに渡り22年間になるが、グラスルーツの現場で「無償でやってあげているんだ!」みたいなことを言う人に会ったことは一度もない。
スポーツはそのスポーツを愛するみんなのため。その精神は尊いし、今も、そしてこれからも大事な礎なのは間違いない。
ただ、だからと言って何もかもをボランティア活動にゆだねるというのが、時代の流れに即していないのも事実だ。以前と比べると平日午後に時間を取れるお父さん、お母さんコーチの数は減ってきている。グラスルーツのクラブはどこも指導者不足で四苦八苦している。
僕が所属するクラブでもそれは同じで、僕や育成部長が2~3チームを担当しないと回らない。頑張れる人が支えるというのは聞こえがいいけど、でもそれでは長続きはしない。だからこそグラスルーツクラブであっても取り組み方に変化が必要になってきている。
クラウス「支払われる最適なお金を考えて行くべきではないかと思うんだ。例えば僕のクラブでは月謝を取るようにしているけど、両親はみんな満足している。最適な頻度でのトレーニングと試合が行われて、十分に考えられたトレーニングを提供していることとセットで提供できているからだ。ドイツにおける社会情勢を省みる必要がある。ヨーロッパでもまだゴールのある空き地があれば、子どもたちが自然に集まってきてストリートサッカーをしている国もたくさんあるだろう。でもドイツの特に大都市では、そうした環境は少なくなってきている。やれる場所はたくさんある。いたるところの公園に、誰でもサッカーができるような施設がある。ただ、人が集まりにくいという現実がある。悲しいことだが、そうした場所で子どもたちが何らかの被害にあうという事件が少なからずあるし、そうなると保護者は子どもたちだけで遊びに行かせることに躊躇したり、許可できなくなってしまう。これは親として当然の心理だと思う」
――◆――◆――
サッカーはドイツにおいても今も変わらず国民的なスポーツだ。スマホの影響が日々大きくなってきているのは否定できないものの、それでも子どもたちの多くはサッカーをしたいと思ってくれている。
【ブカツへ世界からの提言】暴力ってなんだろう? 子どもの尊厳を踏みにじってはいけない――日本の"悪しき伝統"をドイツの指導者はどう見る?
1.FCケルン育成アカデミー元統括部長クラウス・パプストは「ドイツには優れた資質を持った子どもたちがたくさんいるんだ。それもブンデスリーガの育成アカデミーだけではなくて、普通の町・村クラブにも優れた資質を持った子供たちが本当にたくさんいる」と話をする。
ただそんな彼らが育っていく環境作りは十分ではない。ドイツのスポーツ文化はボランティア精神に支えられている。そのおかげで誰でも年に60ユーロほどの会員費を払えばトレーニングに参加して、週末の試合でプレーができる。それ以上の月謝も登録費もない。
スタッフや指導者はみんなクラブに関わることが喜びあり、そこでサッカーに触れ合い続けられるのが生きがいだという人がたくさんいる。僕がドイツに渡り22年間になるが、グラスルーツの現場で「無償でやってあげているんだ!」みたいなことを言う人に会ったことは一度もない。
スポーツはそのスポーツを愛するみんなのため。その精神は尊いし、今も、そしてこれからも大事な礎なのは間違いない。
ただ、だからと言って何もかもをボランティア活動にゆだねるというのが、時代の流れに即していないのも事実だ。以前と比べると平日午後に時間を取れるお父さん、お母さんコーチの数は減ってきている。グラスルーツのクラブはどこも指導者不足で四苦八苦している。
僕が所属するクラブでもそれは同じで、僕や育成部長が2~3チームを担当しないと回らない。頑張れる人が支えるというのは聞こえがいいけど、でもそれでは長続きはしない。だからこそグラスルーツクラブであっても取り組み方に変化が必要になってきている。
クラウス「支払われる最適なお金を考えて行くべきではないかと思うんだ。例えば僕のクラブでは月謝を取るようにしているけど、両親はみんな満足している。最適な頻度でのトレーニングと試合が行われて、十分に考えられたトレーニングを提供していることとセットで提供できているからだ。ドイツにおける社会情勢を省みる必要がある。ヨーロッパでもまだゴールのある空き地があれば、子どもたちが自然に集まってきてストリートサッカーをしている国もたくさんあるだろう。でもドイツの特に大都市では、そうした環境は少なくなってきている。やれる場所はたくさんある。いたるところの公園に、誰でもサッカーができるような施設がある。ただ、人が集まりにくいという現実がある。悲しいことだが、そうした場所で子どもたちが何らかの被害にあうという事件が少なからずあるし、そうなると保護者は子どもたちだけで遊びに行かせることに躊躇したり、許可できなくなってしまう。これは親として当然の心理だと思う」
関連記事
- 【ブカツへ世界からの提言】暴力ってなんだろう? 子どもの尊厳を踏みにじってはいけない――日本の“悪しき伝統”をドイツの指導者はどう見る?
- 【ブカツへ世界からの提言】ビエルサら名将を輩出する国ではなぜ暴力的指導がないのか?――日本の“悪しき伝統”をアルゼンチンはどう見るか?
- 【ブカツへ世界からの提言】心を開かせる「対話」を。ザッケローニたち名将もそうだった――日本の“悪しき伝統”をイタリア人指導者はどう見る?
- 中大バスケ部・サッカー部はなぜ一般社団法人を立ち上げたのか?【前編】学生アスリートに「普通の環境」を
- 中大バスケ部・サッカー部はなぜ一般社団法人を立ち上げたのか?【後編】トークン発行で予算だけでなくコアファンの獲得も視野に