クラウス「プロフェッショナルなトレーニングというのは、こちらが事細かく教えていくということではないよ。年代に応じた特徴や性質を知り、子どもたちが理解できる表現やジェスチャーで指摘をし、自分で問題に気づいて問いを立てられるように導いて、自分でモチベーションをもって課題や目標に取り組めるように支えて、自主的な取り組みと知識的な学びを適切なタイミングで使い分け、短期的ではなく、長期的な視野で考えられたものだ。それを実現するためには、正しく育成された指導者が必要不可欠だ。そして彼らが少なからずの収入をそこで得られるようになったら、みんなにとってウィンウィンの関係性が築けるんじゃないかと思うんだ。
予算的なことで苦い顔をする人もいるかもしれないが、だがよく考えてみてくれ。子どもたちが日常的に使用しているものはかなり高価なものが多くないか? スマホの月額使用料も、ゲーム機も、パソコンも。映画にいったりしたらそれなりにお金はかかる。サッカートレーニングで週に2回、週末に1試合だとしたら月に12回もの活動だ。週3でトレーニングだったら16回。そこで活動する時間を確保するだけではなく、質の高いトレーニングとサポートを受けられるし、そこで築ける人間関係のことも考えたら、それなりに支払われるべきではないだろうか。
もちろん、なかには収入が少ない家庭だってある。そのためのサポートがなければならない。だからスポーツにおける取り組みに対して協会や行政からの補助金はマストの政策だと思う」
社会のあり方は時代とともに変わるかもしれない。でもその中で子供たちの成長に大切な本質的なことはいつの時代も同じではないだろうだろうか。ドイツであっても、日本であってもそうだ。デジタルでの交流が増える昨今だからこそ、現実社会でのコミュニティに関わりやすい環境作りが欠かせないし、だからこそスポーツの持つ意味はこれまで以上に大切になってくるはず。そんなスポーツが健全に回るための十分なサポート体制は、その国々に合った形で確立されなければならないのだ。
取材・文●中野吉之伴
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