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海外サッカー

「3点差」に挑む瀕死のマドリー、奇跡は起こせるのか? 現地メディアは過去の逆転劇を列挙し、「逆境でこそ燃えるタイプ」と盛り上げに必死だが…

下村正幸

2025.04.16

エムバペ(左)とヴィニシウス(右)は、マドリーを奇跡の逆転勝利に導けるか。(C)Getty Images

エムバペ(左)とヴィニシウス(右)は、マドリーを奇跡の逆転勝利に導けるか。(C)Getty Images

 数々の逆転劇を見せてきたレアル・マドリーにとっても、とてつもない挑戦になる。第1レグの結果は0-3。相手のアーセナルは、堅固な守備に定評があるチームだ。

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 しかし追い込まれた状況でメディアやファンも巻き込んで、逆転の機運を盛り上げるのはマドリーの真骨頂だ。スペイン紙『AS』の前編集長、アルフレッド・レラーニョ氏は次のように綴っている。「第1戦を敵地で先勝すれば難なく次のラウンドに進出できると考えられがちだ。しかし、マドリーの場合は、逆にリードして第2レグを迎えると、周囲を疑心暗鬼にさせる何かがある。昨シーズンのCLラウンド16、ライプツィヒ戦でかいた冷や汗が記憶に新しい(敵地の第1レグを1-0で終え、第2レグを1-1で引き分けて次ラウンドに進出)。むしろ、マドリーは性質的に逆境でこそ燃えるタイプだ。チームにとってもファンにとっても、1点を守り切るよりも3点差をひっくり返すほうが発奮材料になるのだ」

 つまるところ今夜の一戦は、条件的に彼らに打ってつけというわけだ。熱狂的なマドリディスタというスタンスを前面に押し出して、人気を博している『AS』紙のトマス・ロンセロ記者は、過去にマドリーがサンティアゴ・ベルナベウで演じてきた逆転劇をいくつも列挙しながら、「狂気の夜に何が起こったのかは、我々のハードディスクに書き込まれている。マドリディスタであるということは、無条件に信じること、不可能という言葉が辞書から追放されているのを確信すること。今度は第1レグのようにはいかない」といつものように盛り上げ役を買って出ている。
 
 もちろん、同紙にはハビエル・シジェス記者のような、現実的な意見の持ち主も存在する。彼の意見はこうだ。「マドリーは瀕死の状態にある。今回ばかりは奇跡が起こるとは考えにくいが、そのわずかな可能性に懸けるには、まずは今シーズンを通して欠落している批判精神を表面化させ、自分たちの欠陥に気づくところから始めなければならない。奇跡の再現を呼びかけるだけでは不十分だ」

 実際、DFに故障者が続出し、現役を引退したトニ・クロースの不在の影響により中盤の構成力が低下。前線も、自慢の破壊力よりも守備への貢献度の少なさを指摘されることが多くなっているのが、今のマドリーだ。先述のレラーニョ氏は「マドリーはチームとしての機能性を欠いたまま、春を迎えた」と断じる。

 しかし、それでもマドリーはマドリーだ。ジャーナリスト兼作家のルシア・タボアダ氏は、「マドリーの逆転劇において使われる動詞は、creer(信じる)だ。pensar(考える)でも、conseguir(達成する)でも、aspirar(志す)でもない。宗教にも通じる強力な信念体系を形成しており、サンティアゴ・ベルナベウが教会、アントニオ・リュディガーのような選手が預言者の役割を果たしている」と解説する。

 世界中のマドリディスタは今夜、信じる力を胸に秘めて、決戦のときを迎える。

文●下村正幸

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