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なぜ今、バルサファンは祝福と同時に不安を感じているのか? 新時代の幕開けに潜む“フリック離脱”と“ヤマル流出”という2つの爆弾

下村正幸

2025.05.22

バルサのフリック監督(左)とヤマル(右)。(C)Getty Images

 スペイン紙『AS』によると、バルセロナのラ・リーガ優勝の翌日に市内で行なわれた優勝パレードで沿道には6万7000人が集結したという。2年ぶり28度目の戴冠がこれほど喜ばれている理由はいくつもあるが、その1つが今シーズンの成功はあくまで序章に過ぎないという若いチームへの期待感だ。

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 もっとも勝負事では、勝つことよりも勝ち続けることのほうが難しいとはよく言われる。ハンジ・フリック監督は、ホーム最終戦だった第37節のビジャレアル戦後、「来シーズン、再びタイトルを獲得するには、より一層努力を重ねなければならないだろう。私はもっと上を目指したい。私が求めるのは完璧ではない。進化だ」と発言している。

 今シーズンのバルサは、開幕直後から主要タイトルの3冠獲得に向けて突っ走っていくのではないかと思わせる、凄まじいエネルギーを発していた。結果的にCLの準決勝で敗れて3冠の夢は潰えたわけだが、スペイン紙『エル・パイス』のラモン・ベサ記者は、「今シーズンのようなポジティブなダイナミズムを来季のピッチで再現するのは困難だろう。バルサはミラノ(インテルとの第2レグが行なわれた地)で後にも先にもないチャンスを逸した」と綴っている。相手の研究が深まるのは間違いないし、来シーズンはもはやチャレンジャーではなくスペイン王者の立場で勝ち切ることが求められる。

 フリック監督にとっては新たな挑戦となるが、その指揮官も不安要素の1つに浮上している。もちろん手腕に対するものではない。『AS』 のフアン・ヒメネス記者が危惧するのは、その真っすぐな性格が去就に及ぼす可能性だ。「ジョアン・ラポルタ会長は先日、『フリックが人生で最も幸せな時期の一つを過ごしていると感じている』と述べたが、同時に、物事が自分の手から滑り落ちていくのを見るのを嫌がる性格の持ち主であることも示唆した。現時点では、2027年6月までの契約延長が決定している。しかし、フリックの人柄は長期政権を予感させない。つまりいつ何が起こるか分からないということだ」と指摘し、例としてホッフェンハイムのスポーツディレクター(SD)を6か月で辞めたケースを挙げている。
 
 同記者は、ラポルタ会長とデコSD(スポーツディレクター)の頭の中にある2025-2026シーズンの陣容にも言及し、「外から獲得する選手は限定的にとどめ、チームの顔になったラミネ・ヤマルが快適な日常を過ごせることを念頭に入れた編成になる」と記している。

 そのヤマルの去就を心配するのが、元バルサのコミュニケーションエリアディレクターのアルベル・モンタギュ氏だ。バルサ寄りのスポーツ紙『エル・ムンド・デポルティボ』のコラムで、こう警鐘を鳴らしている。

「バルサに在籍している間、レオ・メッシには多くのオファーが舞い込んだ。バルサはそれらの関心をかわすことに成功したが、ヤマルに関しても、すべての移籍記録を塗り替えるような高額オファーの洪水に備えるべきだ。彼の移籍金は既に天文学的な数字に達しているが、昨今のサッカー界の動向を考えると、必要な金額を支払えるクラブは必ず現われるだろう。果たしてバルサは、メッシがそうだったように、ヤマルを長年、引き留めることができるだろうか? これがバルサにとって、今後数年間における最大の悩みとなるだろう。ジョルジュ・メンデス氏をはじめとする代理人チームは、自分たちの手中に金鉱脈を握っていることを自覚し、いかなる移籍取引を実現しても、莫大な富をもたらすことを知っている。今後、ヤマルに何が起こるかは、バルサの手に委ねられていないのかもしれない。どうなるか見てみよう。"ヤマル狂騒曲"はまだ始まったばかりだ」

 一方でフアン・ヒメネス記者は、次のように締めくくった。「これからフリックの時代を築いていくには、ヤマルと同様に、このドイツ人監督をサポートする姿勢を示すことが不可欠になってくる」

文●下村正幸

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