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海外サッカー

人工都市、過酷労働、裏金、灼熱……2022年W杯開催国カタールの「真の姿」とは?

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2020.01.16

カタールはバルセロナに積極的に投資し、サッカー界での影響力を強めていった。

カタールはバルセロナに積極的に投資し、サッカー界での影響力を強めていった。

 次の投資先はバルセロナだ。カタルーニャの雄は長くユニホームの胸スポンサーを拒んできたが、11年にその牙城を崩したのが『カタール・ファウンデーション』だった(その前の『ユニセフ』はスポンサーでなくパートナーシップ契約)。

 貧しい国や地域を助け、スポーツや音楽の振興に寄与する財団は、バルサにとって「伝統を破って金儲けに走った」という真実の隠れ蓑になった。13年からは『カタール航空』が胸スポンサーを務めた。こうして小国カタールは他の中東諸国を尻目に、サッカー界にその名を知らしめたのだ。

 そして、パリSG。ヨーロッパの主要都市の多くは世界的なビッグクラブを持っているが、その中でパリだけは違った。パリとフランスにとっては忸怩たる思いだっただろう。カタールはそこに目を付ける。

 11年5月、国家投資庁を通じてパリSGを買収し、カタール傘下のクラブとしたのだ。ズラタン・イブラヒモビッチをはじめエディンソン・カバーニ、ネイマール、そしてキリアン・エムバペなどのスーパースターが花の都に降り立ったのは、すべてカタール・マネーのおかげ。カタールはこれ以上ないほど賢明なカネの使い方で、サッカー界で存在感を高めていったのである。
 
 カネと政治と知恵を駆使したこれらの投資はすべて、もちろんW杯への入念な布石だ。ただ、招致から開催に向けては、バッシングも少なくない。まず何よりも、開催地決定の際に票を裏金で買ったという話は後を絶たない。またカタールには同性愛を禁じる法律があり、国家規模のメディア検閲、夏場は50度にも達する気候も懸念された。

 さらに、外国人労働者のパスポートを取り上げ、過酷すぎる条件で働かせる制度にも批判が集まってきた。スタジアム建設のためにインドやネパールなどから連れてこられた労働者たちは、やはりパスポートを取り上げられ、帰りの切符も用意されていない。まるでこの地に骨を埋めろと宣告されているかのようだ。ノルウェーのある人権団体はこう警鐘を鳴らしている。

「スタジアム建設中に亡くなった労働者ひとりにつき1分間の黙祷を捧げるとしたら、カタールW杯の全64試合はすべて沈黙の中でプレーされることになる」
 

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