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海外サッカー

人工都市、過酷労働、裏金、灼熱……2022年W杯開催国カタールの「真の姿」とは?

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2020.01.16

カタールW杯組織委員会CEOの一人であるナサール・アル=カテール氏。

カタールW杯組織委員会CEOの一人であるナサール・アル=カテール氏。

 その後、私はカタールW杯組織委員会CEOの一人、ナサール・アル=カテール氏の下を訪ねた。若くてとても聡明な彼は、すべてのことを深く理解していた。カタールの望み、恐れ、必要なもの、FIFA、カタールの人々、そして世界中のサポーターの思い……。いま寄せられている批判は、カタールのイメージを多少損なうことになっても、社会改革の大きなキッカケになるはずだと言う。

「カタールはW杯を通して、国のソフト面を国際的なレベルにまで引き上げたいと考えているのです」
 
 16年12月にカタール政府は、雇用者が出稼ぎ労働者のビザや法的地位を左右できる悪名高い『カファラ制度』の廃止を宣言。パスポート剥奪などの問題も少しずつ解決に向かっているという。またW杯期間中は飲酒ができる場所を設け、同性愛禁止法も大会中は緩める方針だ。アル=カテール氏はこう語る。

「W杯の成功はカタールにとって、歴史的な新たな一歩となるはずです。世界中から訪れるサポーターにはこの国のあちこちを観光し、本当のカタールを知ってもらいたいと思っています」
 
 大会組織委員会が一番危惧しているのは、より観光地として成熟しており、カタールからたった30分のフライトで飛べるUAEのドバイに、サポーターを奪われないかということ。観光客を自国に留めておけるかは、インフラやホスピタリティーの整備次第だろう。

 いまだかつて、これほど大きな挑戦に乗り出した国はない。前回のW杯は世界で一番大きな国であるロシアで開催された。そして今、逆に世界で最も小さい部類に入る国が、砂漠の上で奇跡を起こそうとしている。3年後のカタールW杯は試合以外にも興味深いものが数多く存在する―。現地取材を終えて、私はそう思うようになった。

取材・文:リカルド・セティオン
翻訳:利根川晶子
※『ワールドサッカーダイジェスト』2019年12月5日号より転載

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフーなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭も執っている。
 

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