専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外サッカー

人工都市、過酷労働、裏金、灼熱……2022年W杯開催国カタールの「真の姿」とは?

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2020.01.16

決勝戦を行なうルサイル・スタジアムと路面電車の駅。

決勝戦を行なうルサイル・スタジアムと路面電車の駅。

 このとんでもない町をいったい誰が造っているのか―。それが知りたかった私は、幸運にもインドからの出稼ぎ労働者と仲良くなることができた。彼の名前はサンジットで、スタジアム周辺の植木管理人だった。

 灼熱の環境で木や花を育て、保つのはなかなか大変な仕事だという。ただ、「2年前にカタールに来た時と比べれば、まるで天国だ」とも言っていた。出稼ぎに来た当初はセメントを作るための砂の調達係で、とんでもない暑さと埃の中で労働する日々。死を覚悟したことは一度や二度ではなかったという。

 幸いにもインドで学んでいた植物の知識が役立ち現在の職に就けたが、今も過酷な状況下で働き続けている仲間は多いと嘆いた。

 このサンジットに作業員のヘルメットを借りた私は、立ち入り禁止のスタジアム建設現場に潜入した。大会前に誰よりも早く決勝のスタジアムを突撃取材するのが、90年のイタリアW杯から続けているルーティンだ。前回のロシア、3大会前の南アフリカでは警察に捕まりもしたが。
 
 不安顔のサンジットに「心配はいらない、私はブラジル人だから楽天的なんだ」と言うと、彼は笑ってくれた。ただ、「もし今回も捕まったら、私は無関係だとシラを切らしてもらうよ」と念を押された。

 私は青のヘルメットを被り、巨大なスタジアムへと足を向けた。開幕3年前にもかかわらず、かなり建設が進んでいる。遅延を繰り返して開幕直前に完成した箱もあった14年のブラジルW杯とはまさに雲泥の差だ。内装はとてもモダンで、そこに立つだけで圧倒される。とんでもないパワーの空調も付けられ、その他にも随所に最新のテクノロジーが駆使されていた。

 スタジアムの前には路面電車の駅が完成していて、待合室は冷房が効いていた。この時の気温はなんと45度。この部屋に入るのがあと少し遅れていたら、私は熱中症で倒れていただろう。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号