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海外サッカー

ネイマールは「悪い奴」ではなく「超世間知らず」。旧知の記者が語る実像とは?

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2020.02.29

このシモンエスは2010年当時のネイマールに警鐘を鳴らした。当時は受け流されたが、今やそのメンタル面が最大のネックに。(C)Getty Images

このシモンエスは2010年当時のネイマールに警鐘を鳴らした。当時は受け流されたが、今やそのメンタル面が最大のネックに。(C)Getty Images

 今年の2月5日でネイマールは28歳になった。選手として円熟味が増し、脂が乗り切る年齢だ。ところが、年齢に反比例するようにネイマールは世界ナンバー1の座から遠ざかるばかりだ。

「2020年のネイマールは世界の十指にも入っていない」

 2011年の頃にそう言う者がいたら、私は一笑に付していただろう。サッカーがまったく分かっていない素人だと嘲笑しながら。しかし、それが現実味を帯びている。

 停滞を招いたのは、ネイマールが節目節目で判断ミス、選択ミスを塗り重ねてきたからだと指摘する声があるが、生まれ育った環境にすべての原因があるというのが私の見方だ。

 ネイマールは決して悪い人間ではない。彼に足りないのは(足りなかったのは)、教育だ。きちんとした教育を受ける機会がなかったために、いわゆる世間一般の常識が欠けているのだ。そのために他者と衝突し、軋轢を生んでしまう。

 もちろん、きちんとした教育を受けられなかったサッカー選手は山ほどいる。ネイマールが手に負えなくなったのは、幼い頃から飛び抜けてサッカーが上手かったからだ。
 
 11歳で入団したサントスでは常に特別扱いだった。コーチも、スタッフも、果ては親までも。つまりネイマールは、ピッチ外で努力する必要がなかったのだ。

 サッカーが素晴らしく上手いだけで、人生を渡ってはいけない。人は生きる術を教育によって学ぶ。その教育を受けなかったネイマールは、サッカー以外のことにどう対処していいのか分からないのだろう。

 バルサに移籍したばかりの頃、私はネイマールから山ほどの不安と愚痴を聞かされた。彼は異国の地で途方に暮れていた。友だちがいない。言いたいことが伝わらない。食べ物が違う。メディアがちやほやしてくれない。練習方法が違う。寒い。サポーターも、道も、スーパーマーケットも、何もかもがブラジルと違うと、そうこぼした。

 サッカー選手としては世界最高レベルのスキルを持っていても、人としての中身はそうではない。ネイマールがだれかれ構わず噛みつくのは、そうする以外の解決方法を見つけられないからだ。教育を受けていない彼には、闘うことが唯一自分を守る方法なのだ。

 ネイマールにとって皮肉としか言いようがないのが、それが人生で唯一上手くやれるサッカーを蝕むようになってしまったことだ。

 ネイマールはただボールを持って攻めたいだけで、他人を犠牲にしたいわけではない。単に大金を稼ぎたいだけで、誰かを不快にしたいわけではない。自分の振る舞いを他者がどう見るか、どう感じるか、それが分からないだけなのだ。だから自分の思うようにやる。それ以外のやり方は知らない。
 

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