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海外サッカー

ついに辿り着いた悲願の“世界制覇”。W杯を掴んだ天才が涙を流さなかった理由――アルゼンチン代表とメッシの18年【後編】

チヅル・デ・ガルシア

2023.02.08

 だが、この時にメッシは涙を見せなかった。それは、前年のコパ・アメリカで、苦悩、辛抱、努力といった全てが報われ、背中に背負っていた目に見えない重荷を下ろしていたからだった。

 カタール大会でのメッシは自信に満ち溢れていた。初戦でサウジアラビアによもやの敗戦を喫した後も、冷静な口調で「僕たちを信じてほしい」と国民に呼びかけた。そんな頼もしいキャプテンの姿にチームメイトたちも奮起し、その昔にメッシの幼馴染たちが抱いた「レオに任せておけば勝てるという安心感」が生まれ、「みんながレオの指示に従い、レオも周りのみんなに合わせて動くチーム」は、アルゼンチンに36年ぶりのW杯をもたらしたのだった。
 
 メッシの故郷ロサリオにある生家周辺は、今、彼の壁画とアルゼンチンカラーで美しく彩られている。アーティストの1人、マルレーネ・スリアガはメッシを「辛抱の象徴」と呼ぶ。

「レオはアルゼンチンにある“Perseveras y triunfaras”(耐え忍ぶ者は成功する)という言い伝えの象徴であり、模範的な英雄だ。そんな彼に感謝の意を表し、称えるために生まれ育った場所を壁画で飾りたい」

 アルゼンチンには歴史上の人物からスポーツ選手に至るまで「英雄」と呼ばれる人間が何人かいるが、「耐え忍んだ英雄」はこれまでにいなかった。どんな身体が小さくても、「よそ者」と冷遇され、あと一歩で優勝に手が届かない屈辱を何度も味わっても、メッシは決して諦めなかった。私にとって、そんな英雄が誕生するまでのヒストリーを、アルゼンチンで見極められたのは、W杯優勝を目にするよりも貴重な体験だったかもしれない。

取材・文●チヅル・デ・ガルシア
Text by Chizuru de GARCIA

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