本田が運営法人の代表取締役CEOを務めるNow Doのサービスは、慎重な試行錯誤を経て当初からはかたちを変えている。まだローンチ前ゆえ、具体的なサービス内容は企業秘密となってしまうが、おぼろげながら輪郭は見えている。
当初描いていた三者のマッチングでは、ミスマッチが起こりやすい。
「例えば2人で食事に行くより、3人のほうが都合は合わせにくくなりますよね。それと同じで施設の空き時間、コーチの空き時間、プレーヤーが希望する時間をすべて合わせるのは大変です」
誰が妥協せざるをえなくなるかと言えば、多くの場合はコーチだろう。なぜならプレーヤーのニーズがあって初めて、マッチングの需要が生まれるからだ。考えてみればウーバーも、実質的には「クルマとそのドライバー」に「ユーザー」という二者のマッチングなのである。
鈴木の話から想像すると、Now Doはマッチングの先にも独自の価値を持ったサービスを展開しようとしているようだ。マッチングされたコーチが、離れた場所からでもコミュニケーションを取れるといったITの長所を存分に活用しながら、ユーザーであるプレーヤーの成長により深くコミットする。課題解決のソリューションを、ユーザーごとにカスタマイズして提供する。そんなイノベーティブなサービスを模索しているに違いない。
鈴木からのヒントがもうひとつ。
「本田はせっかく自分が関わるからには、自分にしかできないオリジナルの何かを徹底して追求したいといった強い思いを持っているようです」
そもそもソルティーロ ファミリア サッカースクールは、本田の強い思いから誕生している。現役の日本代表選手がその全盛期にプロデュースするスクールだからこそ、「サッカーを通じて、夢を持つことの大切さを伝えたい」という本田の発するメッセージが強く刺さり、広く響くに違いないという思いからだ。
現在、ソルティーロのスクールは日本各地の約70校に広がり、およそ5000人の子どもたちを預かるまでに規模が大きくなった。海外7か国でも事業を展開し、この9月中旬には国際サッカー組織団体IFDA(International Football Development Association)が主催する「フットボール・ヒーローズ・アワード」の「サッカー教育への貢献」部門でグランプリを受賞した。とはいえ、最初からソルティーロの開校を歓迎してくれる国内の地域が多かったわけではないと鈴木は振り返る。
約5000人の子どもたちは、そのほとんどがプロサッカー選手以外の、プロのアスリートでもない道へと進んでいくだろう。だとすれば、ソルティーロのコーチに求められるのは、狭いサッカー界よりも広い社会に軸足を置いた人間の育成だと鈴木は語る。にもかかわらず、スクールの規模拡大によって、コーチの質を担保する難易度は以前よりも高くなっている。優秀なコーチが泣く泣く去って行かざるをえないという、鈴木が心を痛めてきた問題もまだ残ったままなのだ。
イノベーティブであろうNow Doのサービスは、ITを活用したどのようなソリューションを提案してくれるのか。本田と鈴木のタッグによる新たなこの取り組みもまた、険しい道を切り開いていく果敢な挑戦に違いない。(文中敬称略)
取材・文●手嶋真彦(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』2019年10月10日号より転載
当初描いていた三者のマッチングでは、ミスマッチが起こりやすい。
「例えば2人で食事に行くより、3人のほうが都合は合わせにくくなりますよね。それと同じで施設の空き時間、コーチの空き時間、プレーヤーが希望する時間をすべて合わせるのは大変です」
誰が妥協せざるをえなくなるかと言えば、多くの場合はコーチだろう。なぜならプレーヤーのニーズがあって初めて、マッチングの需要が生まれるからだ。考えてみればウーバーも、実質的には「クルマとそのドライバー」に「ユーザー」という二者のマッチングなのである。
鈴木の話から想像すると、Now Doはマッチングの先にも独自の価値を持ったサービスを展開しようとしているようだ。マッチングされたコーチが、離れた場所からでもコミュニケーションを取れるといったITの長所を存分に活用しながら、ユーザーであるプレーヤーの成長により深くコミットする。課題解決のソリューションを、ユーザーごとにカスタマイズして提供する。そんなイノベーティブなサービスを模索しているに違いない。
鈴木からのヒントがもうひとつ。
「本田はせっかく自分が関わるからには、自分にしかできないオリジナルの何かを徹底して追求したいといった強い思いを持っているようです」
そもそもソルティーロ ファミリア サッカースクールは、本田の強い思いから誕生している。現役の日本代表選手がその全盛期にプロデュースするスクールだからこそ、「サッカーを通じて、夢を持つことの大切さを伝えたい」という本田の発するメッセージが強く刺さり、広く響くに違いないという思いからだ。
現在、ソルティーロのスクールは日本各地の約70校に広がり、およそ5000人の子どもたちを預かるまでに規模が大きくなった。海外7か国でも事業を展開し、この9月中旬には国際サッカー組織団体IFDA(International Football Development Association)が主催する「フットボール・ヒーローズ・アワード」の「サッカー教育への貢献」部門でグランプリを受賞した。とはいえ、最初からソルティーロの開校を歓迎してくれる国内の地域が多かったわけではないと鈴木は振り返る。
約5000人の子どもたちは、そのほとんどがプロサッカー選手以外の、プロのアスリートでもない道へと進んでいくだろう。だとすれば、ソルティーロのコーチに求められるのは、狭いサッカー界よりも広い社会に軸足を置いた人間の育成だと鈴木は語る。にもかかわらず、スクールの規模拡大によって、コーチの質を担保する難易度は以前よりも高くなっている。優秀なコーチが泣く泣く去って行かざるをえないという、鈴木が心を痛めてきた問題もまだ残ったままなのだ。
イノベーティブであろうNow Doのサービスは、ITを活用したどのようなソリューションを提案してくれるのか。本田と鈴木のタッグによる新たなこの取り組みもまた、険しい道を切り開いていく果敢な挑戦に違いない。(文中敬称略)
取材・文●手嶋真彦(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』2019年10月10日号より転載