コートをえぐり高く跳ねるセカンドサービスが、鈍い音を立て相手のラケットを弾き、大きくラインを割っていく――。
予選上がりの世界ランキング273位が、第5シードのトマーシュ・マハーチュ(チェコ/同22位)を6-3、7-6(4)で破った大番狂わせ。それは島袋にとって、2023年9月のアスタナ大会以来、実に2年ぶりに手にしたATPツアー本戦の白星でもあった。
2023年にウインブルドン、そして全米オープンで予選を突破し本戦出場。1年間でランキングも264位から135位に急上昇させた島袋だが、そこからの1年半は、停滞した。
「なかなか勝てない時期が続いたので、こういうトップ選手と戦う機会もなかった」と、島袋が回想する。心では「強い選手にも、勝てる自分が絶対いる」と言い聞かせるも、なかなか実践のチャンスがない。昨年のジャパンオープンでは主催者推薦枠をもらえず、「悔しい思い」も募らせた。
それら「悔しさ」の蓄積こそが、振り返れば、今回の爆発的躍進への導火線となったかもしれない。特に、2週間前に東京で開催された国別対抗戦デビスカップは、大きな転機となったようだ。
もっとも彼は、日本代表に招集されていない。
「先月、中国(張家港市)のチャレンジャー(下部大会)で優勝したのに、9月のデ杯にも残念ながら選ばれなかった。調子が良いのに選ばれなかったので、その悔しさがすごくあった。『活躍して、自力でデ杯に呼んでいただけるくらいに絶対になりたい』という思いは、本当に誰よりも強い。その中で迎えた、今大会だった」
自分の力を周囲に認めさせたい。そのためにも、上位選手と戦う舞台に立ちたい――。そのモチベーションを胸に挑んだ今大会の予選では、サービスとフォアを軸にした攻撃テニスで、2試合連続ストレート勝利。
25日に実施された本戦初戦で、世界22位をネットの向こうに回しても、その勇猛なプレースタイルに変わりはなかった。いきなりのサービスエースで幕を開け、以降も自分のサービスゲームを危なげなくキープ。そうして第8ゲームで、この日最初のターニングポイントが訪れる。
「今大会、サービスゲームはすごく自信がある中で、リターンゲームでどう相手にプレッシャーをかけて崩すかが、今日はキーになるかなと思っていた。8ゲーム目でやっとリターンも入り始め、セカンドサーブになった時に、相手の脅威になるようにミスをしても気にせず、とにかく強くリターンを打つことを心掛けた」
その心理戦は、奏功する。島袋のリターンに気圧されたか、マハーチュはダブルフォールトでブレークを献上した。このブレークを機に、「相手も、サービスゲームですごくプレッシャーがかかっている」と、島袋は感じたという。
「プレッシャーをかけられたぶん、ストローク戦になっても、僕のパターンが多くなった。こう言ってはなんですが、すごく試合自体もコントロールできるようになった」
その心理的優位性が、第2セットで先にブレークを許しても、直後にブレークバックできた要因だろう。タイブレークでは、「ビビった瞬間もあった」という。ただ5-4の場面で、キックサービスで相手を崩し、浮いたリターンをダウンザラインに叩き込みウイナーを決めた時、「勝利が確信できた」。
大きな舞台で、強い相手との戦いを渇望してきた島袋が、今大会で戦ってみたい相手は、ずばり、世界1位のカルロス・アルカラス(スペイン)。もっとも、ドローの反対側に位置する両者の順路が交わるのは、頂上決戦のみだ。
その事実を知ってか知らずか、はやる心を抑えるように、彼は言う。
「明日以降も、相手はランキングの高い実力者の選手ばかりですけど、全然チャンスはあるので......、引き続き、はい。謙虚に頑張りたいと思います」
取材・文●内田暁
【画像】ジャパンオープンテニスが開幕!シード選手のシャポバロフ、ティアフォーが敗れる波乱。WCの綿貫は無念の初戦敗退
【関連記事】大学時代からブレない島袋将の攻めの姿勢。ポジションを上げて叩くフラットは必見!~石井弥起/プロの観戦眼35<SMASH>
【関連記事】全米でも予選突破の島袋将が、自ら切り開いたツアーでの居場所「シード選手と練習する機会も増えた」<SMASH>
予選上がりの世界ランキング273位が、第5シードのトマーシュ・マハーチュ(チェコ/同22位)を6-3、7-6(4)で破った大番狂わせ。それは島袋にとって、2023年9月のアスタナ大会以来、実に2年ぶりに手にしたATPツアー本戦の白星でもあった。
2023年にウインブルドン、そして全米オープンで予選を突破し本戦出場。1年間でランキングも264位から135位に急上昇させた島袋だが、そこからの1年半は、停滞した。
「なかなか勝てない時期が続いたので、こういうトップ選手と戦う機会もなかった」と、島袋が回想する。心では「強い選手にも、勝てる自分が絶対いる」と言い聞かせるも、なかなか実践のチャンスがない。昨年のジャパンオープンでは主催者推薦枠をもらえず、「悔しい思い」も募らせた。
それら「悔しさ」の蓄積こそが、振り返れば、今回の爆発的躍進への導火線となったかもしれない。特に、2週間前に東京で開催された国別対抗戦デビスカップは、大きな転機となったようだ。
もっとも彼は、日本代表に招集されていない。
「先月、中国(張家港市)のチャレンジャー(下部大会)で優勝したのに、9月のデ杯にも残念ながら選ばれなかった。調子が良いのに選ばれなかったので、その悔しさがすごくあった。『活躍して、自力でデ杯に呼んでいただけるくらいに絶対になりたい』という思いは、本当に誰よりも強い。その中で迎えた、今大会だった」
自分の力を周囲に認めさせたい。そのためにも、上位選手と戦う舞台に立ちたい――。そのモチベーションを胸に挑んだ今大会の予選では、サービスとフォアを軸にした攻撃テニスで、2試合連続ストレート勝利。
25日に実施された本戦初戦で、世界22位をネットの向こうに回しても、その勇猛なプレースタイルに変わりはなかった。いきなりのサービスエースで幕を開け、以降も自分のサービスゲームを危なげなくキープ。そうして第8ゲームで、この日最初のターニングポイントが訪れる。
「今大会、サービスゲームはすごく自信がある中で、リターンゲームでどう相手にプレッシャーをかけて崩すかが、今日はキーになるかなと思っていた。8ゲーム目でやっとリターンも入り始め、セカンドサーブになった時に、相手の脅威になるようにミスをしても気にせず、とにかく強くリターンを打つことを心掛けた」
その心理戦は、奏功する。島袋のリターンに気圧されたか、マハーチュはダブルフォールトでブレークを献上した。このブレークを機に、「相手も、サービスゲームですごくプレッシャーがかかっている」と、島袋は感じたという。
「プレッシャーをかけられたぶん、ストローク戦になっても、僕のパターンが多くなった。こう言ってはなんですが、すごく試合自体もコントロールできるようになった」
その心理的優位性が、第2セットで先にブレークを許しても、直後にブレークバックできた要因だろう。タイブレークでは、「ビビった瞬間もあった」という。ただ5-4の場面で、キックサービスで相手を崩し、浮いたリターンをダウンザラインに叩き込みウイナーを決めた時、「勝利が確信できた」。
大きな舞台で、強い相手との戦いを渇望してきた島袋が、今大会で戦ってみたい相手は、ずばり、世界1位のカルロス・アルカラス(スペイン)。もっとも、ドローの反対側に位置する両者の順路が交わるのは、頂上決戦のみだ。
その事実を知ってか知らずか、はやる心を抑えるように、彼は言う。
「明日以降も、相手はランキングの高い実力者の選手ばかりですけど、全然チャンスはあるので......、引き続き、はい。謙虚に頑張りたいと思います」
取材・文●内田暁
【画像】ジャパンオープンテニスが開幕!シード選手のシャポバロフ、ティアフォーが敗れる波乱。WCの綿貫は無念の初戦敗退
【関連記事】大学時代からブレない島袋将の攻めの姿勢。ポジションを上げて叩くフラットは必見!~石井弥起/プロの観戦眼35<SMASH>
【関連記事】全米でも予選突破の島袋将が、自ら切り開いたツアーでの居場所「シード選手と練習する機会も増えた」<SMASH>