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決勝戦で突然緊張に襲われた。それでも優勝できたのはなぜ?【テニスメンタルアドバイス15】

スマッシュ編集部

2020.06.25

アドバイスしてくれた綿貫陽介(左)と穂積絵莉(右)。写真:THE DIGEST写真部

 準決勝までは快調に突き進んできたのに、決勝で突然緊張が襲ってきた。もしもあなたが決勝まで進んだ時、そういう状態になるかもしれない。どう対処すれば、優勝できるのか。全日本テニス選手権で同じ経験をし、見事勝ち切ったチャンピオンに聞いた。

 決勝のマッチポイントについて、「覚えていないんですよね」と言うのは、2016年優勝 者の綿貫陽介[決勝/綿貫陽介6-2 6-4内山靖崇]。

「準決勝まではずっと冷静に戦っていましたが、決勝は全日本選手権の中で唯一パニックに陥りました。もうパニクっていて、何も考えられなかったんです」。前日から様々なシミュレーションを行ない試合に備える綿貫だが、ビッグタイトルを目前にして冷静ではいられなかったようだ。

「とりあえず何でもいいからポイントを取ろうという感じでした。あとは、『絶対勝ってやる』というのは、ずっと胸に強く思っていました」。最後に勝利を呼び寄せるものは、『絶対に勝つ』という強い思いのようだ。
 
 2013年に優勝した穂積絵莉[決勝/穂積絵莉6-4 4-6 6-4今西美晴]も、「準決勝までは全然普通で、調子も良くていい感じだったんですが、決勝の日の朝起きたら、いきなりご飯が食べられませんでした。試合でも手が震えて、最初のゲームは、まったくサービスが打てない状態だったんです」と打ち明ける。

 そんな状態で、緊張がマックスになるマッチポイントは、どうやって乗り切ったのだろうか。

「マッチポイントを2、3本取れず、最後に取れたマッチポイントは、どうしてもこれで取りたいという気持ちが一番あって、自分のサービスで相手がミスしました。相手が苦手な方に打ちましたが、リターンは結構きわどいボールだったので、『お願いだからラインを割って!』と思っていました(笑)」

 どうしても「取りたい」という強い気持ちが、全てを凌駕したということかもしれない。それでも相手のミスを引き出せるように、苦手なサイドにサービスを打つなど、緊張している中でも勝つための努力を最大限行なっていることが、勝利へと結びついたのだろう。

 決勝戦で突然緊張した時、自分を支えてくれるのは、勝利に対する強い思いだったという点は、2人に共通している。

構成●スマッシュ編集部、取材協力●HEAT JAPAN、アディダスジャパン
※スマッシュ2017年5月号から抜粋・再編集

【PHOTO】若手の星・綿貫陽介の両手バックハンド、ハイスピードカメラによる『30コマの超分解写真』