海外テニス

17歳のシャラポワが頂点へ。女子テニス界に生まれたパーフェクトストーリー/2004年女子決勝【ウインブルドン名勝負】

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2020.07.11

「どうやって勝ったのかわからない」と言うシャラポワが、女王セレナのウインブルドン3連覇の夢を砕いた。(C)Getty Images

 ウインブルドンの過去の名勝負の記事をシリーズで掲載。今回は2004年の女子決勝、マリア・シャラポワ対セレナ・ウィリアムズ。3連覇を狙っていたセレナを鮮やかに倒したシャラポワは、この優勝を切っかけに女子テニス界に旋風を巻き起こしていくことになる。

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 こんな結末を誰が予想できただろうか。ウインブルドンのセンターコートでプレートを愛おしそうに掲げているのは、百戦錬磨のセレナではなく、弱冠17歳のシャラポワだった。
 
 多くの子どもがテニス選手になってウインブルドンで優勝したいという夢を見るが、夢の実現のために行動を起こすことは簡単ではない。しかし、シャラポワの親は子どもの将来に賭け一大決心をして、わずかな現金を握りしめてアメリカに渡った。

 幸運なことに環境が整ったとしても、本人に才能がなければ、夢は夢で終わってしまう。シャラポワはテニスの才能に加えて、夢を実現するために努力する才能にも恵まれていた。2年前のジャパンオープンジュニアに出場するために来日した彼女は、「夢はナンバー1になること。ツアーを回るには肉体的にもっと強くならなくてはいけない」と言っていた。まだほっそりとした少女で、WTAツアーの大会に初めて出場したばかりの時だった。
 
 今大会に現れたシャラポワはしっかりとトレーニングを積んできた身体つきになっており、「オフコートのトレーニングはとても重要で、すごく一生懸命したわ。それが私のテニスを劇的に上達させることになるし、2週間のグランドスラムを戦うために必要だから」。フィジカル面での準備は整い、彼女の強みの1つであるメンタルは決して揺るがず、勝ちたい意思を前面に出していた。

 シャラポワはウインブルドンに2回目の出場で、勝ち上がるにつれて、目に見えて実力を上げていった。グランドスラム決勝進出はもちろん初めてだ。

 決勝の相手は、大会3連覇がかかっているセレナ。「3連覇こそが私が本当に欲しいものなのよ。今は『さぁ、記録に挑戦しよう』って感じ」。ウインブルドンの3連覇が叶ったならば、9人目の偉業ということになる。