海外テニス

【大坂なおみ・全米テニス名勝負集2】初の全米OP本戦で、ピンチを切り抜けられたのは憧れの選手のおかげ/2016年1回戦

内田暁

2020.09.01

大坂なおみは時速201キロのサービスを叩き込み、ピンチを切り抜けた。写真:THE DIGEST写真部

 全米オープンテニスの開幕に合わせて、月刊スマッシュの過去のリポートの中から、大坂なおみの「全米名勝負」をピックアップしてお送りする。2回目は2016年に初めて全米オープン本戦の舞台に立った81位の大坂が、1回戦で30位のココ・バンダウェイにフルセットで勝利した試合だ。

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「サービス合戦のような試合を予測していた」。試合前に抱いた大坂なおみの予感は確かに現実のものとなり、そして実際に勝敗の分岐点となったのも、象徴的な2本のサービスエースだった。

 第1セットをタイブレークの末に失うも、第2セットを2度のブレークの末に大坂が奪い返し雪崩れ込んだ、ファイナルセット。ゲームカウント3-3からのサービスゲームで、大坂はミスを重ねて0-40の危機に陥る。そのピンチをまずはサービスウイナーで1本逃れると、ここから圧巻の見せ場が訪れた。

 乾いた破裂音を轟かせ、時速125マイル(約201キロ)の超高速サービスをセンターに叩き込んでエース。さらに相手に息つく間も与えず、すぐさま120マイル(約192キロ)をセンターに叩き込んで2連続エース。この後も相手のミス、そして相手のボディへと打ち込むキックサービスによる5連続ポイントで、3連続ブレークポイントの窮地を切り抜けてみせた。
 
 この最大のチャンスを逃したバンダウェイは、徐々にプレッシャーを感じ始める。「ファイナルセットの私は、あまりに消極的だった。あれでは勝てない」

 憮然と振り返る敗者の姿が、試合終盤のターニングポイントを示している。結果的に最終ゲームとなった第10ゲーム、バンダウェイはスイングをうまく制御できなくなったかのように、フォアで立てつづけにミスを重ねる。

 そうして迎えた最初のマッチポイント――バンダウェイが叩いた低い弾道のバックは、バスッと豪快な音を立ててネットに。この瞬間、灼熱の中で行なわれた2時間25分の熱闘に、終止符が打たれた。

 試合後のバンダウェイは、チェアアンパイアとの握手を拒絶。それほどにこの日の彼女は、主審に対し苛立ちを募らせていた。