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海外テニス

【大坂なおみ・全米テニス名勝負集4】2年前の涙から成長し、リベンジ成功!/2018年準決勝

内田暁

2020.09.05

18年全米OPで準決勝に勝った瞬間の大坂なおみ。写真:THE DIGEST写真部

18年全米OPで準決勝に勝った瞬間の大坂なおみ。写真:THE DIGEST写真部

 全米オープンテニスの開幕に合わせて、月刊スマッシュのリポートの中から、大坂なおみの「全米名勝負」をピックアップしてお送りする。4回目は優勝した2018年の準決勝。16年全米でファイナル5-1リードから逆転負けを喫したキーズに、リベンジできた試合だ。

   ◆   ◆   ◆

「Prime time Under Spotlight(プライムタイム・アンダー・スポットライト)」――2万3千人を収容する世界最大テニス専用スタジアムの、電光掲示板に点滅する文字が、始まりが迫るナイトマッチを煽る。屋根を閉じ、照明が落とされ暗転したコート上を、カクテル光線がせわしなく徘徊した。

 抑揚たっぷりのアナウンスに名を呼ばれコートに足を踏み入れる大坂は、落ち着き払った表情に、微かな笑みを浮かべる。「アリーナに入った時は、ものすごく興奮していた。だって、まだここでナイトマッチを戦ったことがなかったから!」

 試合後に大坂は、無邪気な笑みを浮かべて〝その時〞を振り返る。多くの選手が飲まれるアーサー・アッシュスタジアム特有の雰囲気を、大坂は、初の経験であるからこそ「楽しんだ」
 
「経験」と大坂と言えば、この日の対戦相手であるマディソン・キーズとの、初対戦時のエピソードが思い出される。それは2年前の、アーサー・アッシュスタジアム――。ファイナルセットを5―1とリードしながら逆転負けした大坂に、会見で「勝敗を分けたのは、経験の差か?」との質問が飛んだ。すると大坂は、まだ涙の痕の残る目で質問者を見据えて答える。

「私は、経験はあまり意味がないと思っている。良い選手は、初めての大会や場所でも良いプレーができると思うから」。当時の18歳が提示したその哲学は、居合わせた多くの報道陣の心に、まだ解の見えぬパズルのように引っかかった。

 それから2年後――。準決勝の大舞台で大坂は、彼女が定義する「良い選手」とは何かを示してみせた。初めての状況を楽しみ、なおかつ冷静さを保った立ち上がり。第1セットの第4ゲームでは3連続ブレークポイントの危機を招くも、「相手が素晴らしいプレーをした時は仕方ない。自分のできることに集中しよう」と、やるべきことを整理した。
 

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