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海外テニス

勝機を見出しながらも、極度の緊張に襲われた日比野菜緒「勝ちたい思いが強くなりすぎて…」〈SMASH〉

内田暁

2021.02.12

「勝てない相手ではない」と感じた日比野だったが…。(C)Getty Images

「勝てない相手ではない」と感じた日比野だったが…。(C)Getty Images

 理想的な、試合の立ち上がりに見えた。
 自身のサービスゲームで、相手のミスもあり3連続ポイント奪取。最後も、ワイドに切れるサービスで相手を追い出すと、リターンの跳ね際をとらえてストレートに打ち込む会心のウイナー。

「試合前は緊張があったけれど、試合が始まったらそこまで感じなかった」と言うように、日比野菜緒が幸先の良いスタートを切った。

 以降は互角の攻防となるが、その中で日比野は「勝てない相手ではない」と感じたという。
 対戦相手のクリスティーナ・ムラデノビッチは、3年半前にトップ10に名を連ね、ダブルスでは今も世界のトップに座す選手。その好選手がミスを重ねる様から「相手も緊張している」と感じ取った。

 そして、勝機をリアルに覚えた時……極度の緊張が、日比野の全身をしばりつける。
 相手のサーブコースを読みきったようなリターンでブレークし、ゲームカウント5-3とリードし迎えた、自身のサービスゲーム。だが、15-15でおかしたダブルフォールトを機にこのゲームを落とすと、歯車が狂い出す。コーナーを狙ったボールがラインを割り、立て直すことができない。
 
 5-7、1-6の敗戦に、日比野は「自分の良いプレーができなかったのが残念」と、深い悔いを抱えこんだ。
 
 日比野が対戦相手に見た緊張を、当のムラデノビッチも素直に認めた。
「1回戦を戦った時とは、状況がかなり違かった。暗くなり始めていたし、凄く風が強くて、ボールへの入り方やフットワークを調整するのが難しかった。その環境への対応が難しくてお互いにナーバスになったが、試合が進むにつれて私の方が上手く適応できたのだと思う」
 元世界10位は、外界の状況と自身の心境をそのように振り返った。
 
 ただ、日比野の緊張を誘発した要因は、ムラデノビッチのそれとは少々異なっていたようだ。
「1回戦を勝つのは、そこまで驚くことでなくなってきたなかで、もっと上を目指していく思いがある。先を見ているから、勝ちたい思いが強くなりすぎての緊張感だったかなと思います」
 それが、日比野が思う硬さの理由だ。

 日比野は、5年前にこの全豪でグランドスラムデビューを果たして以来、ことごとく1回戦でシード選手に当たり、2年近くグランドスラムで勝てない時を過ごした。その後、ランキングを落とし本戦出場を逃す苦境を乗り越え、昨年は全豪、そして全仏でも初戦を突破。地力が底上げされた実感を覚える中で、今大会は特にチャンスを感じ、だからこそ自身の内で重圧を生んでしまったのだろう。

「悔しいですね」と胸中を率直な言葉に込め、日比野はふーっと大きく息を吐いた。
 この悔いを経験値とし、次に活かすしかない。

文●内田暁

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