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海外テニス

国際色豊かな2つのシンデレラストーリー。全米OP決勝に駆け上がったフェルナンデスとラドゥカヌ<SMASH>

内田暁

2021.09.11

エクアドルからの移民の父とフィリピン系のカナダ人を母に持つフェルナンデス(左)と、ルーマニア人の父と中国系の母親の間生まれたラドゥカヌ(右)。(C)Getty Images

エクアドルからの移民の父とフィリピン系のカナダ人を母に持つフェルナンデス(左)と、ルーマニア人の父と中国系の母親の間生まれたラドゥカヌ(右)。(C)Getty Images

 今大会が始まった時、この決勝の顔合わせを予想できた人は、恐らくは皆無だっただろう。ランキングで上位に立つのは、19歳で73位のレイラ・フェルナンデス。対するのは、18歳で150位のエマ・ラドゥカヌ。いずれも、“ニューカマー”から一気に頂上決戦の舞台まで駆け上がった、シンデレラストーリーのヒロインだ。

 昨今の女子テニスでは小柄な部類に入る両者だが、細身な身体からは想像できない鋭いショットと、バンビのようにコートを縦横に掛ける軽快なフットワークを武器とする。相手が打った先にいる高い予測力と、ポイントを巧妙に組み立てる“テニスIQ”の高さも、両者に見られる特性だ。

 さらにこの2人には、歩んできた足跡や文化的背景にも、多くの共通項がある。

 カナダ国籍のフェルナンデスは、エクアドルからの移民の父と、フィリピン系のカナダ人を母に持つ。元プロサッカー選手だった父の手ほどきで、妹のビアンカとともにテニスに打ち込んできた。

 幼少期から小柄だったためでもあるだろう。周囲は、世界のトッププロになるという彼女の夢を、時に鼻で笑ったという。ただそのたびに、「絶対に私はトップ選手になる」と懐疑の声をモチベーションに変え、家族もその夢に懸けた。
 
 現在はフロリダに住むフェルナンデス家の父は、「カナダ人として娘が成功を収めたことをどう思う?」と問われると、「とてつもなく大きな意味を持つ」と言ったきり、しばし涙に言葉をさえぎられた。

「移民問題は世界中で物議をかもしているのは知っているし、理解もできる。その中で、カナダは我々を受け入れチャンスをくれた」。この言葉と涙の背後にあるものを、本人は語りはしなかった。ただ、多くの苦労があったことは想像に難くない。

 幼い頃からグランドスラム優勝を夢見てきたフェルナンデスは、「セレナとビーナス(ウィリアムズ)、大坂なおみがトロフィーを手にする姿に、自分を重ねてきた」という。その大坂を3回戦で破った時、フェルナンデスは、「彼女の活躍をずっと追ってきた。だから自然と彼女のプレーが予測できて、それが私のアドバンテージになったと思う」と笑顔で明かした。

 そのフェルナンデスとジュニア時代に対戦を重ねたラドゥカヌは、ルーマニア人の父と、中国系の母親の間にカナダで生まれた。イギリスに移ったのは2歳の時。国際色豊かなバックグラウンドを持つ18歳は、「母親が中国人であることは、私のまじめな人格形成に大きく影響したと思う」と言う。その縁もあるだろう、彼女が幼いころに憧れた選手は、中国のリー・ナ。
 
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